新・介護百人一首

祖母の手で
洗われる皿
今三周目
洗われた皿
まるで新品

大分県拂川 心和 15歳)

愛知県 前田佳乃

詞書

認知症の祖母が洗ったものを三回も洗っていて、すごくきれいなお皿になりました。

感想コメントをいただきました

茂木健一郎

ていねいに洗っているのか、あるいはていねいすぎるのか、三周目に入って洗われている皿、そしていっしょうけんめいその作業に向き合っている祖母の姿に向けられた作者の目線の温かさにほっとさせられます。「まるで新品」という言葉に、日々更新されていく私たちの命の本質を見るようです。人生、無駄なことなどなにもない。私たちが生きていく中で流れる時間の一瞬一瞬が、一期一会である。そんな深い哲学を感じました。

茂木健一郎

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。