ことし5月から6月にかけて5分×全8話で放送された、NHKの異色のミニドラマ「義経のスマホ」。「義経がスマホを持っていたら」というコンセプトで、“スマホ中毒な義経”を川栄李奈さんが演じ、大いに話題となった。

今回、新撮20分が加わった拡大版「義経のスマホ 夏草の陣」が、8月24日に放送。なんと“頼朝のスマホ”の映像が加わった、番組からのサプライズを感じる内容。「最後、パソコンの前にいた人物は誰なのか――!?」と悶々としている、「○○のスマホ」ファンも多いことだろう。

そこで、今回も、番組の企画と演出を担当した番組ディレクタ―・田中涼太さんに直撃!(前回の舞台裏インタビュー記事は、こちらから
NHKプラスでの見逃し配信(https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2022082406202)を10倍楽しむための“ココだけの話”を教えていただいた!


——まず、「続編」の企画意図について、教えてください!

「義経のスマホ」の企画を立ち上げたときから、新撮を加えた拡大版をやろう! と考えていました。そこで5分版の企画書を書いているときから、義経以外の誰を描こうと脚本家の竹村武司さんとも相談していました。ただ当初は、弁慶、静御前、頼朝…といくつか候補がありました。

5分×全8話の「義経のスマホ」の脚本を練っていくなかで、頼朝を裏側に入れることを決めました。5分版の脚本も頼朝のスマホが後に入ることを想定しつつ仕上げていきました。

ただ、今回、新たに追加した“頼朝のスマホ”シーンなどは「義経のスマホ」5分版の際には撮影しておらず、放送後の皆さんからの感想や反響をふまえ、脚本をブラッシュアップして、新たに撮影したものです。その際には、Twitter上で話題になった大喜利ハッシュタグ「#頼朝のスマホ」などは大いに参考にさせていただきました。実はツイッターの皆様からは毎回多くのアイディアをいただいています。いつもありがとうございます!

——義経以外を描くと考えたとき、頼朝に決めた理由は何でしょうか?

5分版では、義経は頼朝に利用された、ただの駒のように使われた、という印象を視聴者の皆さんは抱いたのではないでしょうか。

いつもこの「○○のスマホ」シリーズは、第1弾『光秀のスマホ』第2弾『土方のスマホ』と、すべて比較的救いがないといいますか、悲しい結末で毎回終わります。義経の悲劇性もご存じの方が多いと思います。その刹那的なところもこの番組の売りではあるのですが、毎回同じでもつまらない。皆さんの期待を少しでも裏切りたいという思いもありました。

そこで、脚本の竹村武司さん、アドバイスを頂いているスエヒロさんやジブさまとも相談する中で、今回はもう少しだけ救いのある物語にできないかと考えました。そこで、単純に義経は駒として扱われ切り捨てられたわけではないという方向に描くことを決め、頼朝を選びました。

史実的には、義経も頼朝も、家族と強制的に離されて、住み慣れた土地を離れて長い時間を過ごしており、もしかしたら二人とも同じような孤独を抱えた似た者同士だったのでは…と想像しました。その上で「頼朝の本心」を追加しようと決めました。

頼朝は意識高い系に見えても、それは置かれた境遇における彼なりの処世術であって、内実は義経といっしょだった…と想像を膨らませることで、実は2人の気持ちが通じ合った瞬間はちゃんとあったのではないか。そうであってほしいなと。

——北条政子役に瀧本美織さんを起用したのは?

政子は、従来“強くて怖い尼将軍”というふうに描かれることが多いですが、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、周囲に気配りができ、人の気持ちをくむ、包容力のある政子という印象。

一方、今回の「義経のスマホ」での政子は、現行の大河とも、旧来的の政子ともまた違った、いずれのイメージも併せ持つ政子を演じていただきたいという思いがありました。難しい役どころになると思い、演技力のある方にお願いさせていただきました。瀧本美織さんは、そんな期待に見事に応え、演じ切っていただいたと思います。
(後半はこちらから

放送を見逃した方は、ぜひ「NHKプラス」、または「NHKアーカイブス」で!

『義経のスマホ 夏草の陣』
9/1(木) 午前0:55 までNHKプラスで配信。

『光秀のスマホ 歳末の陣』【再放送】
8/30(火) 午前2:30 までNHKプラスで配信。

『土方のスマホ 正月の陣』【再放送】
8/31(水) 午前3:10 までNHKプラスで配信。

公式Twitter「スマホを持ってる源義経」
番組 HP