これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
運動をするのにちょうどいい季節になってきました。「でも、私、運動神経が悪いから......」としり込みして、運動不足になりがちな大人のみなさん! そもそも、「運動神経がいい」ってどういうことなのか、答えられますか?


答え:生まれ持った才能よりも繰り返し練習したおかげ

詳しく教えてくれたのは、日本女子体育大学学長でスポーツ科学の第一人者、ふかしろせん先生。

いわゆる「運動神経がいい・悪い」という表現は、あくまで俗語。スポーツ科学的にいうと、運動神経がいいという状態は、〝自分のイメージどおりに体を動かせる〟ことであり、練習によって誰でも身につけられるものだといいます。

従って、「生まれつき運動神経がいい人なんていない」ときっぱり。そもそも、医学的にいう「運動神経」とは、才能やセンスのことではなく、脳や筋肉をつなぐ神経そのもの。誰しもに備わっていて、 個人差はないのです。

医学用語の「運動神経」とは、脊髄から筋肉までの遠心性神経の総称。運動する際に、“どう動けばいいか”という指令を、脳から筋肉に送る働きをしている。
“初めて行う運動でも、すぐにできてしまう” 人のことを、「運動神経がいい」ということも。これは、“過去の似たような運動の記憶を応用できる”人なのだそう。

とはいえ、運動の出来・不出来には個人差が出ますよね?

これには、脳の中の神経回路が関係していました。いわく、「脳の神経回路は、たとえるなら、入り組んだ地下鉄の路線図のようなもの。その中から、目的地にいち早くたどりつける〝最短ルートを選べる人〟が、いわゆる『運動神経がいい』人です。

例えば、「新宿駅から浅草駅まで」、最短のルートを通れる人が、いわゆる運動神経がいい人。一方、遠回りで乗り換えも多い、時間がかかるルートを選んでしまうのが、運動神経が悪いとされている人だという。しかし、最適なルートを一度覚えれば、次は最短で目的地にたどりつけるように。これが「成功体験」。

つまり、脳の中に適切な神経回路を作ることができているか否か」で決まるのだとか。

しかし、それも「成功体験」と「反復練習」を繰り返すことで、誰にでも身につけることができるのだそう。

そこで、「才能とは関係なく、努力した人のみに与えられるもの、それがいわゆる運動神経」なのだと、深代先生は力説します。

(NHKウイークリーステラ 2021年10月1日号より)