これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
汚れたものを洗うときに使う、亀のような形の 道具ってな〜に? そう、「たわし」です。今では、たわしといえば〝あの形〟というほどおなじみですが、実は昔は違っていたのだとか。あなたは知っていましたか?


答え:妻が障子のサンを掃除したから

詳しく教えてくれたのは、老舗たわしメーカーの社長・西尾智浩さん。あの亀のような形のたわしを発明したのは、曽祖父の西尾しょうもんさんとのこと。

正左衛門のもともとの生業は、家業だった〝縄作り〟。暮らしは楽ではありませんでした。
そこで、「これまでにない新たな商品を開発し、専売特許をとろう。一獲千金で貧乏を抜けだすんだ」と、固く決意していたといいます。そして生み出されたのが、亀の形のたわし——ではなく、「靴拭きマット」です。

ときは明治時代、人々の生活様式が西洋化される中で、履物も草履から靴へと変わっていきました。そんな時流をくんだ正左衛門のアイデアは受け、発売当初は大いに売れました。

もともと正左衛門が作っていた縄の原料であるシュロを、針金で巻いて作ったアイデア商品。
「靴拭きマット」のパーツから発想して、亀の形のたわしが誕生。マットには不向きだったシュロも、手で汚れを落とす目的で使う分には最適なかたさだった。それまでは、ワラなどを簡単に束ねただけのものがたわしとして使われていた。

ところが、マットの原料に使っていたシュロは、繊維が柔らかく、靴で何度も踏まれるうち に毛先が潰れてしまうため、次第に悪評が立ち、大量の返品を抱えるはめに......。正左衛門は落ち込みますが、妻・やすがとった〝ある行動(=障子のサンの掃除)〟 をきっかけに、さらなる新商品のアイデアを思いつき、すぐさま開発に乗り出します。

やがて、明治(1907)年、「亀の子たわし」が誕生。ちなみに、名前の由来は、完成した新商品を見た息子が「亀みたい」と言ったことだそうです。

(NHKウイークリーステラ 2021年7月2日号より)