NHKが大正時代から教育番組を放送していたのを知っていますか?
連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でも描かれていたように、1925(大正14)年にラジオ放送が開始された「英語講座」から数えると、教育番組は100年近い歴史があります。
第二次世界大戦終結の8年後の1953年、テレビ放送の開始とともにテレビ学校放送が始まり、1959年にNHK教育テレビジョン(現在のEテレ)がスタートしました。
ドラマの主人公「安子・るい・ひなた」がラジオから学びの場を得たように、今の子どもたちも、“今の時代のメディア”を使って勉強しています。
1台のラジオに大勢が集まり、耳を傾けた日々から100年。
新型コロナウイルスの影響で急務とされた“子どもの学びの場”の確保、1人1台のタブレット端末の時代となりました。環境や必要に応じて変化を続ける教育コンテンツを、教育現場ではどのように使っているのでしょうか。
●2022年の学校教育とコンテンツの活用
コロナ禍以前より学校の学びにICT(情報通信技術)を取り入れていた、都内の私立小学校の先生にお話しを伺いました。
——コロナ禍以前のICT活用は、どのようなものだったのでしょうか?
電子黒板を使いパソコンにある資料を投影したり、子どもの発表で使ったりしていましたが、まだ実験段階でした。
——新型コロナウイルス感染症が日本でも広まり、2020年2月に休校になってすぐ、全児童にタブレット端末を配布したと伺いました。タブレットの環境や実際に導入したアプリは具体的には何でしょうか?
配布段階ではGoogle Classroom、Zoom、学びサポート、NHK for Schoolアプリを入れました。休校時はZoomで、クラスミーティングや実際の授業を行いましたが、個々の教諭の負担が大きいうえに、子どもたちへきちんとした学びを届けられているのか、先生たちからは不安の声も上がりました。
そんなとき、ICT担当教諭から「既存の教育コンテンツを活用しよう」と提案があり、NHK for Schoolを多くの先生が使い始めました。それはコロナが落ち着いている現在、教室内での授業でも使われています。
●オンライン授業でも使えるの?
——オンライン授業の際にはどのように活用していますか?
授業の始めに映像を見て、その後、それぞれの意見交換や話し合いをしました。Google Classroomに意見や感想を書き込むこともできるので、オンラインだけではつかみづらい子どもたちの反応を知ることもできました。
●教科担任制では、もっと深く
——公立小学校でも“教科担任制”が今年度から始まります。貴学では以前から教科担任制がとられていました。小学校における教科担任制の先駆け校として、NHKの教育コンテンツをどのように活かしてこられたのでしょうか?
私が担当している国語と情報、総合の授業では、「おはなしのくにクラシック」が人気です。古典文学が“視聴”という形で触れられるので、子どもたちの興味が深まっています。これは正直、教科書を使って教えるだけでは得られない反応があります。低学年でも「おはなしのくに」を授業内で利用していますし、「ことばドリル」を家で楽しんでいるという低学年の子どもの話も聞きます。コント仕立てなのが子どもたちにはいいのでしょうか。
また、情報の授業ではタブレット端末を使って写真や動画の撮影、編集を行う前に「しまった!~情報活用スキルアップ~」でコツを学んでから、子どもたちに実際の作業をやらせています。理解し身につけるスピードは、子どもたちのほうが大人よりも速いと感じます。
●メディア・リテラシー教育にも活用
——総合の授業での活用はどのようにされていますか?
「メディアタイムズ」(2022年度のメディア・リテラシーについて学ぶ番組は「アッ!とメディア~ @media~」)「スマホ・リアル・ストーリー」を視聴し、SNSとの関わり方について子どもたちにも考えてもらう取り組みをしています。これは、親御さんにも見てもらえるよう推奨しています。SNSのトラブルは学校外で起こることがほとんどで、親子で話してもらうときに、親御さんのメディアに対する意識も大切だと思っています。
●「戦争と平和」教材としての活用
——今後、NHK for SchoolをはじめとしたNHKコンテンツを、どのように活用していきたいとお考えですか?
毎年夏ごろに「戦争と平和の語らい」の時間をクラスで設けます。授業内で使える学習素材をどうやって探そうか考えています。
NHKの教育番組は、それに耳を傾け視線を向ける子どもたちの笑顔を思い、100年の間、作られてきました。また、「NHKアーカイブス」のオープンアーカイブスでは、貴重な映像も数多くあり、授業でも活用できる映像が配信されています。
いつもの授業を、家での学習を、より楽しい時間に。
盛りだくさんのラインナップに、一度触れてみてはいかがでしょうか。
(取材・文 NHKサービスセンター 木村与志子)