1月7日(火)から始まったドラマ10「東京サラダボウル」。国際捜査係の警察官で緑髪がトレードマークのこう麻里まり(奈緒)と、警視庁の中国語通訳人・あり木野きのりょう(松田龍平)がひょんなことから出会い、日本で暮らす外国人と向き合っていくドラマだ。

主演の奈緒さんに、鴻田麻里というキャラクターや、松田さん演じるアリキーノ(=有木野)との関係性などについて話を聞いた。


──今回の鴻田麻里という役について、どんな人物だと捉えていますか?

彼女はすごくストレートで、自分の思っていることを内に秘めておくというよりは、外に伝えていく人だと思ったので、演じるにあたっても、あまり裏側を考えすぎないようにしました。彼女の場合、「本当に思っていること」と「口にしていること」に違いはないんだと。

このドラマでは、原作ではそこまで踏み込んでいないような、鴻田さんのパーソナルな部分も描かれるので、そこは大切に演じたいと思っています。彼女がどう育ってきて、どんな過去を抱えていて、そこからどういう考え方をするようになったのかとか……。

全9回あるうちの前半部分では、国際捜査係という警察の中にあるチームの活躍が中心ですが、後半になると、鴻田さんや有木野さんのパーソナルな話も登場します。もちろん、徐々に2人の関係が深まってきたうえでの展開です。それも含めて楽しんでいただけたらいいなと思っています。

──そう言われると気になるのが有木野と鴻田の関係です。今後、2人はどういう関係になっていくのでしょうか?

それは言葉にできない関係、です。私は個人的にそういう関係が好きなのですが、人に説明するのは難しいけど、当人同士ではちゃんとわかっているような関係性ってありますよね。

ドラマの後半では、彼が何を抱えて苦しんでいるのか知りたくて、鴻田らしく突き進んでいきます。そうして真実を知った鴻田さんの気持ちは……ひと言では言えません。ただ思ったのは、それは鴻田さんに出会って有木野さんの心が氷解するのと同じように、有木野さんと出会ったことで、鴻田さんも乗り越えるべきものに出会うということなんじゃないでしょうか。

それまでの鴻田さんはとてもまっすぐな人で、まっすぐ進むだけでよかった。でも、人の話を聞くのが得意で、そこから相手を信じることができるという、自信を持った人だからこそ、自分は何を信じるのか? 自分の目は確かなのか? といったことに向き合い、苦しむことになる。つまり、2人が出会ったことで壁を乗り越えて次へ進むという、すごくてきな関係だと思います。

──奈緒さんにとって、そういう大切な存在、関係性の人はいますか?

たくさんいます。それこそ、一緒にお仕事をしたことがきっかけで、家族ぐるみでお付き合いがあったりする人もいます。でも、そういう関係性を人に説明するのって本当に難しいですよね。結局、周りからどう見えているのか、でしかないので。「親子みたい」とか「きょうだいみたい」とか。それもひとつの見方だし、確かにそういう部分もあるなとは思いますけど、私の中では、やっぱりそれとは何か違うんですよね……。

だから、「東京サラダボウル」の原作を読んだとき、鴻田さんと有木野さんの関係をみて、あ、一緒だ!って思ったんです。友情、恋愛、どれにも当てはまらないし、説明できないんだけど、名前をつけられる関係でもない。でもすごく大切。うまが合うね、気が合うね、一緒にいると落ち着くね……。関係を表す言葉より、一緒にいるときにどう感じるかのほうが大事。きっと、人って本来そういうものなんじゃないかなって私も思っています。

──松田龍平さんとの共演はいかがですか? 奈緒さんは、以前、尊敬する俳優の1人として松田さんの名前を挙げていたこともあるそうですが……。

学生時代、映画、特に邦画をたくさん観ていて、龍平さんはそこで活躍されていました。私も影響を受けたのですが、龍平さんの場合は、もう画面に映っているだけで物語が生まれてしまうような、もはや演技とか技術を超えた存在に見えていました。本当にかっこよくて憧れていましたね。

共演自体は、これが2作目です。前回はわずかワンシーンで、セリフを交わすこともありませんでした。だから、ご挨拶したときが緊張のピークで、「わ、本物だ!」と(笑)。

あの日に緊張しきったから、今回は最初からとってもフラットにご一緒することができました。現場にいる龍平さんは、とってもチャーミングで、面白いことを言って笑わせてもくれるし、毎日わいわい、楽しく撮影させてもらっています。

──国際捜査の警察官として、困っている外国人に手を差し伸べるという役柄ですが、奈緒さん自身は外国の方との交流はありますか?

けっこうある方だと思います。私は出身が福岡なのですが、福岡も、東京に負けないくらい「サラダボウル」のように、いろいろな国籍・人種の人たちが暮らしている街なので。だから、小さいときから、外国の方は身近にいましたから。それに上京する前はシェアハウスに住んでいたので、そこではいろいろな国の方が一緒でした。

当たり前のように、国籍や文化が違う人たちが隣で生活をしている感覚──そういう話は、番組制作の家冨プロデューサーともしていて、それは鴻田麻里という役を演じるうえで力になっているかもしれません。なっていたらうれしいな。

──考えていることは隠さずはっきり口にする鴻田ですが、特に好きなセリフはありますか?

「自分の目で見たこと以外信じたくない(=判断したくない)」というセリフがとても好きですね。鴻田さんのキャラクターとしても好きな言葉ですけど、きっと、この作品が伝えられる大きなメッセージのひとつでもあると思います。今、私たちは自分の目で見て、判断をしていかなくてはいけない時代になっていると思うので──。

このところ、いろいろな役を演じて物語を伝えていく中で、気づいたことがあるんです。それが“普遍性”の大切さです。たとえば、刑事ドラマ、医療ドラマ、恋愛もの……とジャンルはいろいろありますが、どの物語にも、普遍的に伝えられるメッセージはあるんですよね。

そして今回でいえば、身近に外国の方がいなくても、警察や通訳とは無縁の生活を送っていたとしても、生きていたら必ず直面する問題として、共通の瞬間はあるはずです。知らない間に相手との間に引いてしまったボーダーラインや、相手のことを知らないから怖がって近寄れなかったという経験、無意識に持ってしまっている偏見とか。それに対して、「自分の目で見たもので判断する」という言葉の持つ強さは、普遍ですよね。

もちろん、その怖さも。自分の判断が間違ってしまう可能性はいつもあるし、そこに責任を持つという意味では覚悟がいる言葉だと思います。それも含めて、みなさんに届いてほしいと思っています。

【プロフィール】
なお

1995年、福岡県生まれ。モデルとして活動を開始し、2013年テレビ西日本のドラマ「めんたいぴりり」で女優デビュー。20歳で上京後、NHK連続テレビ小説「半分、 青い。」でヒロインの親友役に抜擢ばってきされ、以後、多くのドラマや映画に出演。

ドラマ10「東京サラダボウル」(全9回)

毎週火曜 総合 午後10:00~10:45 
             BSP4K 午後6:15〜7:00
毎週金曜 総合 午前0:35~1:20(再放送)※木曜深夜

【あらすじ】
警視庁の中国語通訳人・有木野了(松田龍平)は、ひょんな事から国際捜査の警察官・鴻田麻里(奈緒)と出会う。2人は、失踪した観光客の捜索から、国をまたいだ密輸ビジネスに至るまでさまざまな案件の捜査することに。捜査の合間に各国の食をともに食べるうちに、2人は“胃”の合う絶妙コンビに変化していく。

原作:黒丸『東京サラダボウル―国際捜査事件簿―』
脚本:金沢知樹
音楽:王舟
メインテーマ曲:Balming Tiger
メインビジュアル/デザイン:大島依提亜
メインビジュアル/スチール撮影:垂水佳菜
出演:奈緒、松田龍平
   中村蒼、武田玲奈、中川大輔、絃瀬聡一、ノムラフッソ、
   関口メンディー、朝井大智
   張翰、許莉廷、喬湲媛、Nguyen Truong Khang
   阿部進之介、平原テツ、イモトアヤコ、皆川猿時、三上博史ほか
演出:津田温子(NHKエンタープライズ)、川井隼人、水元泰嗣
制作統括:家冨未央(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
プロデューサー:中川聡子