2025年1月7日(火)スタートのドラマ10「東京サラダボウル」(全9回)。
『クロサギ』で知られる漫画家・黒丸氏による同名漫画を原作とした新感覚警察エンターテインメントで、バディを組むのは、ダブル主演の奈緒と松田龍平。それぞれ、派手な緑の髪色をした国際捜査係の警察官・鴻田麻里と、いかにもワケありそうな寡黙な中国語通訳人・有木野了を演じる。さまざまな国籍の人たちが、まるでサラダボウルの野菜のように入りまじって暮らす街、東京・新宿を舞台に、異色のコンビが活躍する──。
12月10日、放送に先駆けて、第1話の完成披露試写と出演者会見が行われ、主演の2人がこの作品への思い、見どころなどを語った。息のあった2人の楽しいやり取りも合わせて紹介する。
「原作ファンの方々にも楽しんでいただける仕上がり」
──改めて完成した第1話を観てのご感想は?
奈緒「原作漫画で見ていた絵に、しっかり色がついて映像になったという感じでした。しかも、すごくかっこよくて。原作ファンの方々にも楽しんでいただける仕上がりになっていると思います」
松田「ドラマのメインビジュアルどおりですけど、新宿や新大久保でのロケが多かったので、そこで目にしたネオンサインがすごく印象的だったんです。映像でも、そのムードがよく伝わっているなと。改めて第1話を見て、僕自身、今後の展開が楽しみになりました」
──奈緒さんが演じる鴻田は、東新宿署の国際捜査係の警察官。なのに、警察官とは思えない緑色の髪がインパクト抜群でした。今日も髪は緑色ということは、あれはカツラではなく……?
奈緒「地毛です! この作品の中で、鴻田さんの緑髪は、とっても大切な、彼女のパーソナルな要素に関わってくる大切な要素なんです。だから、全頭、地毛を染めて臨みました。
“レタス頭”と作中では呼ばれているんですが、それをどういう色にするのか、助監督さんがご自身の髪を染めて検証してくださって、最終的にこの色に辿り着いて……。
自分ではけっこう似合っているんじゃないかと(笑)。最初はどうなるかと思いましたけど、思いのほかなじんでいると言ってもらっているので、ホッとしています」
──もうひとつの鴻田の特徴として、食の好みが独特なようで……。第1話でもサソリの串焼きや、ほかにもゲテモノ料理の類が登場していました。それは実際に食べたのでしょうか?
奈緒「食べちゃったものも、あります(笑)。本物の料理と、撮影用に別の食材で作った料理と、両方用意してもらっていましたが、お芝居をしているうちにそのまま口にしてしまって、内心、味にびっくりしていました」
松田「けっこう勢いでいってたよね。でも全然、顔には出てなかったよ」
奈緒「そうですか? よかったー。一方、松田さん演じるアリキーノ(有木野のニックネーム)は、一緒に店にいても、自分で頼んだ水餃子しか食べないんですよ」
松田「だって、あの人(鴻田)、僕(有木野)に聞きもしないで勝手に頼んでいたでしょ。しかも、普段食べないような料理をすごい量……。なかなかな人だよね、彼女は」
奈緒「それはそう(笑)。だから、第1話のサブタイトルはズバリ『サソリと水餃子』で。2人の特徴や関係をよく表しているなって思っています」
松田「だいぶタイプが違う2人なんですよね。ドラマとしては、そこが面白いのかなと。
それにしても、時々、これ、何のドラマ撮っているんだっけ?って思うくらい、食べるシーン多いよね。ちょっと制作陣のいやらしさを感じるくらい(笑)」
奈緒「あ、毎回、ゲテモノってわけではないです。普通においしい食べ物もたくさん出てきます!」
松田「まあ、いろいろな国の人たちが事件に巻き込まれて、それを2人が解決していくというドラマでもあるので、それにともなって、いろいろな国の料理が出てくるんですよね。毎回、料理には力を入れて撮っているみたいなので、おいしそうに映っているんじゃないかと。そこは期待していただけたら」
奈緒「今回の撮影で初めて知った料理も多かったよね。メインビジュアルでもケバブを持っています。大事な要素のひとつなんですよ。ぜひ注目してみてください」
言葉が通じないことの大変さを実感
──松田さんの役は、警視庁通訳センターに所属している中国語通訳人。つまり、中国語ペラペラという役どころでしたが、中国語は初めての挑戦? 難しかったですか?
松田「中国語は初めてでしたけど、やっぱり難しいですね。それに通訳なので、中国語をしゃべるだけじゃなく、相手の中国語を聞いて、それを日本語に訳して、今度はこっちの日本語を聞いて中国語に訳して、というのを一連の動作でやらなくちゃいけないので。けっこう、いっぱいいっぱいになってます。
特に発音は、ちょっと抑揚が変わるだけで意味が全く変わってしまうので、シビアな言語ですよね。でも、まさにこのドラマのテーマでもある、言葉が通じないことの大変さを実感している気がします。今は、やれることはやったという感じです」
奈緒「現場ではほとんどNGも出さなくて、完璧でしたよ!」
──最初はタイプの違いから距離のある鴻田と有木野。でも、徐々に気の合うバディになっていくわけですよね。同様に、奈緒さんと松田さんがお互いに気が合うと感じたことは?
松田「……」
奈緒「かたまってる(笑)」
松田「いやあ、気が合っているのか、奈緒さんが合わせてくれているのかわかりませんが、めちゃくちゃ居心地のいい現場です。本当に最初から、気は遣ってないと思う」
奈緒「これは、話していいのかな……。最初の本読みでお隣の席だったんです。それで『今回はよろしくお願いします』ってご挨拶したら、松田さん、『あ、あれ、台本忘れたな……』っておっしゃって。本読みの日ですよ? それを聞いて、すごく気が合いそうだなって思いました(笑)。私も割とそういうウッカリをすることがあるので。でも、あれは、私が緊張しないように、わざと、そういう空気を作ってくださったんですよね?」
松田「……そうです」
奈緒「(笑)」
松田「忘れてみるもんだな(笑)。いや、こう言ってくれること自体が、本当に優しいですよね」
──警察官と警視庁の通訳人が主人公なので、いわゆる「事件解決もの」ですよね。ただ、ほかにも込められたメッセージがありそうです。どんなことを視聴者に伝えたいですか?
奈緒「私たちは、知らない間にいろいろなボーダーラインを相手との間に引いてしまっていると思うんです。原作を読んだとき、それを飛び越えようとする姿が描かれていて、そこに感動しました。だから、今回これをドラマでご覧いただくことで、そのボーダーラインを引いてしまう理由──例えば“無知”からくる恐怖から解放されるような瞬間を提供できたらいいなと思っています。
私自身、撮影の話数を重ねるたびに、日本で暮らす外国の方々が抱えている問題やさまざまな事情を知ることができています。そして、ひとつ知るたびに、明日の自分が今日の自分よりも少し、半歩でも優しい方向にむかえている気がします。だから、みなさんにとっても、このドラマをご覧いただくことは、確実に、優しい明日につながると思うので、そういうふうに観ていただけたらうれしいです」
松田「最初にお話をいただいた時に引っかかったのは、なんで鴻田は警察官なのに髪が緑?ということだったんですが、それにはちゃんとした理由があると聞いて、これはリアリティーのあるドラマなんだと納得してスタートしました。その“理由”にも絡むんですが、今、日本でも外国人がすごく増えている中で、言葉の壁や文化の違いがいろいろな問題を生んでいますよね。
そういった状況を背景に、時にその問題を深く感じられる面白いドラマになっています。例えば言葉が通じないだけで誤解が生まれるし、本当に悪い人が誰なのかもわからない……。そういう部分がテーマになっていて、すごく社会的なドラマです。いろいろな要素を感じてもらえたらと思います」
会見中、記者の質問に対して互いにうなずき合って、すでに“バディ”として相性ぴったりという印象の2人。ドラマでは、ある過去の出来事がトラウマとなり、凍ってしまった有木野の心を、鴻田が持ち前の明るさとパワーで溶かしていくという展開もあるという。
松田「自分とは全く真逆のタイプの人に出会ったことで、有木野は自分を取り戻していくというイメージでやっています」
奈緒「この2人は、簡単に言葉では言い表せない関係。それが個人的には好きだし魅力的だと思っています」
本作の制作統括・家冨未央さんは、自分の子どもの同級生や地域の中に外国人が増えてきたことを実感し、外国人とともに生きる新しい日本についてドラマで表現できないかを考えていたところ、原作に出会ったと語ります。
家冨「ドラマ10では、いつも、自分たちが生きている中で身近に感じているものからヒントを得て作られた作品が多いと思っているのですが、今回、私自身も、子育てをしている中で、子どもの同級生や地域の中に外国の方がずいぶん増えたなという実感がありました。そして、これからの子どもたちは、こういう社会で生きていくことになるのだなと思った時、外国人の皆さんと生きる新しい日本について、何かドラマで表現できないかと考えるようになったんです。
そういったことを数年考えているうちに、黒丸さんの素晴らしい作品に出会うことができました。エンタメでこういうテーマを扱うのはすごく難しいのですが、それを軽々と飛び越えている点に感動して、ぜひ映像化したいと思ったわけです。
この作品のテーマのひとつはコミュニケーションで、奈緒さんと松田さんは、まさに、その面白さを体現してくれています。もし、1つの言葉を相手に投げかけることができたなら、相手の困りごとが一つ、あるいは命が一つ、救えるかもしれない。なのに遠慮して話しかけられない。『あのね』という呼びかけ、それができる関係性の大切さ。それをよく理解してくれている2人だからこそ実現したドラマだと思っています」
ドラマ10「東京サラダボウル」(全9回)
毎週火曜 総合 午後10:00~10:45
BSP4K 午後6:15〜7:00
毎週金曜 総合 午前0:35~1:20(再放送)※木曜深夜
警視庁の中国語通訳人・有木野了(松田龍平)は、ひょんな事から国際捜査の警察官・鴻田麻里(奈緒)と出会う。2人は、失踪した観光客の捜索から、国をまたいだ密輸ビジネスに至るまでさまざまな案件の捜査をすることに。捜査の合間に各国の食をともに食べるうちに、2人は“胃”の合う絶妙コンビに変化していく。
原作:黒丸 『東京サラダボウル―国際捜査事件簿―』
脚本:金沢知樹
音楽:王舟
メインテーマ曲:Balming Tiger
メインビジュアル/デザイン:大島依提亜
メインビジュアル/スチール撮影:垂水佳菜
出演:奈緒、松田龍平
中村蒼、武田玲奈、中川大輔、絃瀬聡一、ノムラフッソ、
関口メンディー、朝井大智
張翰、許莉廷、喬湲媛、Nguyen Truong Khang
阿部進之介、平原テツ、イモトアヤコ、皆川猿時、三上博史ほか
演出:津田温子(NHKエンタープライズ)、川井隼人、水元泰嗣
制作統括:家冨未央(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
プロデューサー:中川聡子