1月5日(日)からスタートするプレミアムドラマ「TRUE COLORS」。2023年に放送され、好評を博したプレミアムドラマ「グレースの履歴」の源孝志監督による新作だ。

作品の舞台は天草で、源監督がかつて訪れたことがある場所。目の疾患が明らかになり、生まれ故郷に戻ってきたファッション業界のトップフォトグラファー・立花海咲みさきの物語が、この地を舞台に幕を開ける。故郷に複雑な感情を抱く海咲を演じるのは、同じく熊本県出身の倉科カナさん。海咲を演じて感じたこと、天草ロケでの様子などについて話を聞いた。


実は、フォトグラファー役を結構演じています。

――熊本を舞台にした作品に出るのは初めてですか?

倉科 実はここ最近、熊本を舞台にした作品が多いんです。この作品では、東京と行ったり来たりしながら撮影に参加していたんですけど、ある時、東京に移動するために天草からマネージャーさんの車で熊本空港に向かう日がありました。

その道は、幼い頃、よく家族で車に乗って天草に遊びに行ってたときの道だったんですが、あの頃の私は、自分が女優になるなんて思ってもみなかったし、いま、この作品を背負ってその道を通っているのがすごく不思議な感じがしたんです。

――今回はファッションフォトグラファーという役柄ですが、フォトグラファー役は初めてですか?

倉科 実はフォトグラファー役も結構多いんです(笑)。カメラを持っていると、「デジャヴ?」ってマネージャーさんに言われるくらい多くて……。朝ドラ「ウェルかめ」の時も、カメラが仕事道具でしたし。

インドア派なのでプライベートで写真を撮る機会があまりないのですが、今回は源監督に「1日1枚でいいから、ロケ弁でもいいから写真を撮っておいて」と言われました。フォトグラファーの友達も多いので、アドバイスを受けたりはしましたが、技術面を磨くより、写真の面白さや楽しさを感じる方がいいなと思いました。

撮影では、ライカのフィルムカメラも使ったのですが、楽しかったですね。シャッター音や、フィルムを巻くときの音だったりとか、1つ1つが、響きが良くて、あれはハマるだろうなと思いました。

――海咲は熊本・天草の出身で、年齢も同じくらい。倉科さんと共通する部分はありますか?

倉科 海咲は18歳で東京に出てきて、専門学校に通いながらアルバイトをしたり、海外に行って勉強したりと、写真のキャリアをどんどん積んで地位を築きました。私も東京に18歳で出てきて、キャリアを積み、ある程度人に知ってもらうことができたので、そういうところは似ていると思いました。

海咲は目の難病がわかってから、2年先まで埋まっていた仕事を全部キャンセルさせられてしまいます。私自身にも、いつキャリアを失ってもおかしくない危機感はすごくあります。

病になった海咲の気持ちは計り知れないけれども、自分にもある危機感や、「もしこうなってしまったら?」という想像力で近づけていったところはあります。あと、家族関係が複雑なところは、私もなんとなくわかります。素直じゃないところや、勝ち気なところも共通するかもしれません。

――海咲は、写真を撮ることで自分と向き合っていくことになりますね。

倉科 海咲は天草に帰って、親しい人や家族の写真を撮っていくにつれて、ちょっとずつずれていたものがフィットしていきます。それはカメラにも近いものがありました。アナログのカメラだと、ピントなどは自分で合わせなきゃいけなかったりします。

ぼやけた状態からどんどんその人物にフォーカスが合っていくっていうのは、母や妹といった被写体と心が通う瞬間と似た感覚がありました。カメラはすごく重要なキーアイテムだったと感じています。

一人ひとりの写真を撮る時、自分でも驚くほどの感情があふれてきたんです。口下手だからちゃんと伝えられないけど、自分自身を築いてきたカメラというアイテムを通して、ずれていたものが合う瞬間は、感情がすごく動く瞬間であり、とても面白かったです。

――原作と台本を読んでどんな印象を持ちましたか?

倉科 自分に共通する部分が多かったこともあり、作品にどうアプローチすべきかをまず考えました。でも、あまり作り込まないようにしようとも思いました。今回は、共演者のみなさんが本当にすごくて。自分が頭でっかちに考えていくよりは、相手から受けたもので作っていくことを大切にしていましたね。

ドラマのタイトルは「TRUE COLORS」ですが、人それぞれ個性や自分だけの色、自分にしか見えない世界があり、共演している毎熊さんが、「この作品で定義できないような美しい色に出会いたい」っておっしゃっていたのに共感しました。私は、自分の色を探す旅だな、と感じました。

また、脚本には原作にないエピソードがいくつもあり、現代にマッチした、新たな「TRUE COLORS」の魅力があると思いました。


渡辺謙さん、毎熊克哉さんとは初共演!

今年9月、熊本・天草で記者会見を行った。右から渡辺謙さん、倉科カナさん、毎熊克哉さん。

――渡辺謙さん、毎熊さんとの共演はいかがでしたか?

倉科 渡辺謙さんは、ずっと拝見していた大先輩なので、ご一緒にお芝居をできたのはすごくうれしくて、すべてが勉強になりました。私たち後輩にもすごく気を使ってくださって、一緒に作品を作っていくっていう感じがしました。

謙さんが演じる多一郎は、海咲の母の再婚相手なのですが、海咲は多一郎さんに嫌悪感があります。簡単に言うと仲が悪い間柄。なので、私と謙さんは役を離れるとフランクなのですが、演じている時はあまり仲良くなりすぎない方がいいね、という話をしていました。

私は毎熊さんのことをマイキーと呼んでいたのですが、マイキーとは初共演。毎熊さんは、咲海の高校時代の親友・晶太郎を演じています。役へのアプローチのために、9kg増量して、船舶免許とバイクの免許まで取得したそうです。本当にすごいと思いました! 

あと、現場ではすごく穏やか。私はいつもちゃきちゃきと気を回してしまうので、見習わなきゃなと思いました。ああいったたたずまい、私もほしいです!


天草という場所の力を借りて、演じられた。

――熊本で暮らしていた幼い頃の天草の印象はどのようなものでしたか?

倉科 小さい頃の天草の印象は、まさに「夏休みー!」という感じでしたね。歴史的背景は大人になるにつれて学び、ある程度の知識は得られるようになりました。撮影での天草は、すべてが美しかったのですが、どこか陰の要素があり、それがまた神秘的だったんですね。それはやはり、天草の歴史的背景があるからかなと思いながら撮影していました。

――そんな天草でのロケはいかがでしたか?

倉科 天草は本当にどこを切り取っても美しく、作品にすごくいい影響を与え、パワーをいただいたなという気がしています。天草の人たちの人柄もよかったです。自分は、こういうところで育ったんだって思うとすごく心が温かくなりました。

個人的には天草の空が好きでした。雲が東京と違って芸術的で、神秘的でしたね。個人的な思い出としては、イルカウォッチングに行かせていただいて、それがすごく楽しくて! イルカウォッチングは癒やしの場になりましたね。また行きたいです。

今回、共演者のみなさんが本当に素晴すばらしくて、お互い芝居をぶつけ合おうぜというよりは、役のまま存在してくださっていたので気持ちが楽になりましたし、不思議な感覚でした。そういったものを監督が自然に切り取ってくださり、ドキュメンタリーに近いような感覚がありました。天草という場所の力を借りて撮影できたのも大きかったですね。

海咲は出演場面と台詞せりふが多く、専門用語もたくさんでてきました。また、撮影では長回しが多くて大変でした。負荷は高かったけど、ドキュメンタリーのような生っぽい部分がすごく面白かったです。

――これからドラマを観るみなさんにメッセージをお願いします。

倉科 源監督が原作、脚本、監督をされているので、原作を読まれた方もその世界観はまるまる楽しめるはずです。海咲の過去への向き合い方や、現在への立ち向かい方に注目していただけるとうれしいですね。

あと、東京、天草、イタリアロケという、なかなかできない贅沢ぜいたくなロケをさせていただきました。その空気感や、景色の美しさ、匂いといったものまでが映像にしっかりと映ってると思うので、そこも楽しんでいただきたいですね。

【プロフィール】
くらしな・かな

1987年、熊本県生まれ。2009年9月、NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」のヒロインを演じる。その後も映画、ドラマ、CM、雑誌、バラエティMCなど幅広く活躍。2022年、舞台での演技が評価され第29回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。
【あらすじ】
高校卒業後に天草から上京し、今はファッションフォト業界のトップフォトグラファーとして活躍している立花海咲(倉科カナ)。イタリアのトップデザイナーからも厚い信頼を得て、その地位を確固たるものにしようとしていた。しかし、海咲にはこのところ少し気になることがあった。それは、視力の低下。もともと軽度な色弱の自覚のあった海咲は、かかりつけの眼科の勧めで大学病院で精密検査を受けるが、そこで思いもよらない疾患を告げられる。カメラマンとして致命傷となりかねない状況に直面して困憊こんぱい する海咲の元に、上京以来一度も会っていない妹から会いたいという便りが届く。仕事を休むことになった海咲は、18年ぶりに故郷・天草行きの船に乗る。しかし、そこで海咲は、嫌悪感を抱き続けてきた継父・多一郎(渡辺謙)に遭遇し、過去の苦い記憶が蘇る。二度と戻るまいと決めていた故郷と会いたくないと思っていた男との遭遇に、ますます気持ちの沈んでいく海咲だったが、高校時代の親友・晶太郎(毎熊克哉)との再会をきっかけに折れかけていた気持ちに光が差し始めていく……

プレミアムドラマ「グレースの履歴」で向田邦子賞やコンテントアジア賞など数々の栄誉に輝いた名匠・源孝志が、大人のための本格的なヒューマンラブストーリーとして贈るプレミアムドラマ第2弾。自然美豊かな九州・天草と秋のイタリア・キャンティを舞台に、哀愁と希望の糸でり上げられる物語にご期待ください。


プレミアムドラマ「TRUEトゥルー COLORSカラーズ(全9回)

2025年1月5日スタート
毎週日曜 NHK BS/BSP4K 午後10:00~10:49
毎週金曜 BSP4K 午後6:10~6:59(再放送)

原作:源孝志『わたしだけのアイリス』(河出書房新社刊)
脚本・演出:源孝志(「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」 「グレースの履歴」 ほか)
出演:倉科カナ、毎熊克哉、渡辺謙ほか
制作統括:八巻薫(オッティモ)、樋口俊一(NHK)
プロデューサー:井口喜一、田中誠一、伊藤正昭(ジャンゴフィルム)

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兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。