これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
はれの日のごちそうの定番、エビやカニ。真っ赤な色が、いかにもおめでたいですよね。でも、ゆでる前のエビやカニは、赤くありません。それなのに、なぜあれほどしっかり赤くなるのでしょうか?
答え:赤の素を食べているから
詳しく教えてくれたのは、高知大学で海洋生物の研究をしている足立享介教授。エビやカニが赤くなる理由は、彼らのエサにあると言います。エビやカニは、主に藻を食べていますが、 その藻の中に含まれている「アスタキサンチン」こそが、ずばり、〝赤の素〟です。
アスタキサンチンは、エビやカニが食べているヘマトコッカス藻が、紫外線からのダメージを防ぐため、細胞内で生成する物質。天然色素の一種で、真っ赤な色をしています。例えば、鮭の身が赤いのも、このアスタキサンチンを含むオキアミなどを食べているから。
ところがエビやカニの場合、鮭とは異なり、ゆでる前は赤くありません。その理由は、エビやカニの殻に含まれるたんぱく質にあります。エビやカニの体内に取り入れられたアスタキサンチンは、たんぱく質と結合。本来の赤色ではなく、茶色や灰色に近い、あの殻の色を形成するように。では、ゆでると赤くなるのはなぜかというと、結合していたアスタキサンチンとたんぱく質が、加熱によって分離するから。すると、本来の色が取り戻され、表面に浮かび上がってきます。
そこで、ゆでたエビやカニの色は、エサから摂取したアスタキサンチンの色=真っ赤になるのです。
※アスタキサンチンには、体に害を及ぼす活性酸素を取り除く抗酸化作用があることから、動脈硬化や糖尿病を予防するサプリメントや老化防止効果をうたった化粧品などにも使われています。
(NHKウイークリーステラ 2021年3月12日号より)