教育コンテンツの国際コンクール「日本賞」(NHK主催)の関連イベントとして「日本賞映像祭」が11月18日~21日、東京・原宿で行われました。NHK財団では日本賞の事務局支援業務やイベント運営業務を担っています。


制作者・パネリスト・モデレーターによるトークセッション。

受賞作上映&制作者らのトークセッション

イベントでは「幼児向け」「児童向け」「青少年向け」「一般向け」、4つの部門の受賞作品が上映されました。またそれぞれの作品の上映後には参加者によるディスカッションも行われました。暮らす国も立場も異なる参加者どうしが、時に驚き、うなずきながら互いの意見に聴き入り、活発に意見を交換する姿がみられました。

ディスカッション後には舞台上で、制作者と、各国の放送の第一線で活躍するパネリスト・モデレーターによるトークセッションがありました。番組の演出意図や撮影・取材の方法について意見が交わされ、客席からも、多くの質問が寄せられました。

国籍も立場もさまざまな参加者たちが、制作者に対して活発に質問を行った。

セッション終了後には、会場の参加者どうしで、固い握手を交わす姿や、連絡先を交換する姿があり、教育コンテンツをきっかけに、国や文化を越えて大勢の参加者がつながる場となりました。


こんな番組を作りたい! 企画部門でアイデアをプレゼン

「日本賞」には上記4部門のほかに、5つ目の部門があります。それが「企画部門」。これから制作したいと思っている番組のアイデアを競うもので、予算、機材などの制作条件が十分でない国や地域の制作者たちへの支援を目的としています。つまり、ここでの賞金を制作費の一部にしてもらうことで番組制作を後押ししようというわけです。

最終審査会では、それぞれの企画について「こんな番組を作りたい」というプレゼン用の短い映像が上映されました。ファイナリストたちは、貧困や差別、環境問題など、自身の暮らす国や地域が抱える状況について説明し、社会課題へのアプローチとしてこんな番組を制作したい、というプレゼンテーションを行いました。

日本で暮らしている中ではなかなかイメージがわかない、世界各地のさまざまな課題が映像を通じて描かれていました。「自分たちが暮らす社会が直面する困難に、放送を通じてアプローチを試みたい」……世界の制作者の想いに胸を打たれました。


ここでの受賞がよりよい作品につながる

今回は昨年度の企画部門で最優秀賞と優秀賞に輝いた2つの作品が完成、その一部が披露され、制作者が登壇・リモート出演しました。

干ばつや大雪などモンゴルの深刻な自然災害に直面する人びとの暮らしと行動を描いた「わたしの家」のディレクターであるアリウンジャーガル・ルブサンセレンさん(モンゴル)は、受賞によって得られた金銭的支援を、広大な国土を自動車で移動するための費用にあて、国内各地の人びとの姿を撮影できたと語っていました。

できあがった作品について語るアリウンジャーガル・ルブサンセレンさん(モンゴル/写真左)。

生き生きと暮らす高齢者やそのヒントを紹介する「ウクライナ高齢者のいきいきライフ」を制作したゾリアナ・ビンダスさん(ウクライナ)はリモートで参加。昨年度、この場での審査委員からのアドバイスを受けて、当初の構想にはなかった演出を加え、番組づくりに生かすことができたと話していました。

最終日(11月21日)の「授賞式」では「グランプリ日本賞」と、企画部門の受賞作品の発表がありました。

グランプリ日本賞には「ハグしてもいい?」(イギリス、イラン、ドイツ)※トップ画像参照が選ばれました。

この作品は、幼少期に受けた性的虐待のトラウマに向き合い、乗り越えようとする男性を追ったドキュメンタリーです。主人公男性の妻で、この作品のディレクター、エラヘ・エスマイリさんは、作品上映後のトークセッションにリモート出演しました。

「最初に夫から話を聞いたとき、私たちが伝えるべき大事な話だと思いました。同じ状況の人たちの助けになると考えました」と、撮影にいたったきっかけを語っていました。


企画部門の最優秀賞には「マタタと仲間たちのサファリ探検」(ケニア)が選ばれました。

番組イメージ画像

人形劇、2Dアニメーション、実写を組み合わせた教育的なテレビシリーズです。パペットの野生動物保護官マタタと2人の子どもが野生動物のもとを訪れ、動物たちから現在の生活状況を聞くことで、気候変動が及ぼす影響について理解を深めていく、というものです。シリーズは気候変動に対して子どもや私たちがどう対処すればよいか伝えることを目的としています。来年の完成披露が楽しみです。


授賞式の時間には、各国の受賞者たちを祝福するかのように、前日から降り続いていた雨がやみ、原宿の空に虹がかかりました。

教育コンテンツをきっかけに、暮らしている国や文化を超えて、それぞれの社会が抱える問題や、人びとのおかれた境遇に対して、参加者全員で思いをはせ共感する……改めて「放送」のあるべき姿について考えさせられるとともに、温かい気持ちになった4日間でした。


日本賞のイベントサイトでは12月1日まで各受賞作品とファイナリスト作品の動画を視聴できます。12月8日(日)までは会場で行われた上映会後の制作者によるトークの様子をご覧いただけます。作品制作者の思いをぜひご覧ください。

日本賞イベントサイトはこちら ※「参加登録」をすると、動画を視聴できます
日本賞ホームページはこちら
※ステラnetを離れます


【番組の放送予定】
日本賞特番「未来を創る世界の教育コンテンツ 日本賞2024」

12月21日(土) Eテレ 午後2:00~4:30

(取材/文 展開・広報事業部 堀田伸一)