5月11日(土)からスタートする土曜ドラマ「パーセント(%)」の会見が4月3日に行われ、出演の伊藤万理華さん、和合由依さん、南野彩子プロデューサーが出席し、ドラマの見どころや、撮影を通じて感じたことなどを語った。

【物語のあらすじ】
ローカルテレビ局「Pテレ」のバラエティー班で、多忙な日々を送る吉澤未来みく(伊藤万理華)。彼女はいつかドラマ班に異動したいと、企画書を出し続けていた。
ある日、編成部長・藤谷(橋本さとし)に呼び出され、自身のドラマの企画が通ったことを告げられる。喜んだのもつかの間、部長は「この企画の主人公、障害者ってことにできへんか?」と未来に尋ねた。局をあげた「多様性月間」というキャンペーンの一貫として、登場人物に多様性を持たせたドラマが必要なのだという。
戸惑う未来をよそに、「障害のある俳優を起用する」という条件で企画は進んでいく。悩みながらも、とにかく企画を成立させねばと取材を進める未来。やがて彼女は車椅子いすに乗った高校生・宮島ハル(和合由依)と出会う。俳優を目指すハルに未来は不思議な魅力を感じ、ドラマの出演をオファーするが、ハルは「障害を利用されるんは嫌や」と拒否。あきらめきれない未来は、ハルが所属する劇団「S」の稽古場を訪ねるが……。

本作はドラマのストーリーと重なるように、「このドラマ自体も、テレビ局が“多様性”にしっかり向き合えているのだろうか?」という疑問からスタートしている。

南野彩子プロデューサーは以前、「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」にとっての“バリア”をなくすことを掲げたEテレの番組「バリバラ」を担当していた。

「その時は、障害のある俳優さんも当たり前にドラマに出られたらいいのに、と漠然と思っていました。ところが、いざドラマ部に移動して、エキストラを集める仕事していた時に、車椅子の男の子の履歴書が来たんです。

そこでふと自分が選ぶ立場になった時、例えば移動や着替え、現場のバリアフリー面などにどこまで対応できるんだろうか、と立ち止まってしまいました。

そこに歯がゆさを感じて、改めて障害のある俳優を迎える現場を作りたいと思いました。既にそれを実際にやっているのがイギリスのBBCで、出演者の何%は障害のある人を起用しましょうといった目標を掲げ、それを達成しているという記事を見ました。

だったらNHKでもそうした目標を作れば、何かが変わるんだろうか? ということを妄想しながら作った企画がこのドラマでした。日本でも、女性管理職を30%にする、といったものがありますが、その人の魅力は数で測れるものではないし、数合わせでは選ばれた側もうれしくはないはず。

そこで、ドラマにも「パーセント(%)」というタイトルをつけて、その中で生きる人たちそれぞれに焦点を当ててみることにしました」(南野さん

未来役の伊藤万理華さんは、そんな南野プロデューサーから直筆の手紙によるオファーを受け、出演を決意したという。

「私の中でははじめに恐れがあって、どういう気持ちで挑もうか、と構えてしまったんです。でも、実際に由依ちゃん(和合由依/ハル役)や劇団『S』のみなさん、スタッフのみなさんにお会いした時に、そんなものは取っ払っていいんだ、と気づきました。いい作品を作るっていう、ただそれだけの気持ちになれたと思います。

私はこのドラマをやる前と後で、大げさではなく、生き方が大きく変わりました。世界の見方や日常のさいなこともそうですが、人と丁寧に会話するということを強く意識するようになりました。

今までも、モノづくりをする上で意識はしてきたつもりですが、この先、いちばん大事にしたいのは、大切な人や周りの人に言葉を尽くしたい、と思えるくらい影響を受けたと思います」(伊藤さん

和合由依さんは、「東京2020 パラリンピック」の開会式で「片翼の小さな飛行機」役を演じ、注目を集めた。本作はオーディションで抜擢ばってきされ、ドラマ初出演となった。

「私はこのドラマで、1日中ずっとお芝居をするということを初めて経験して、すごく楽しい時間を過ごさせていただきました。慣れないことがいっぱいあったんですけれども、 万理華さんから影響受けたところがあり、現場でたくさんのことを学びました。

セリフのある役をやったことがないし、 周りにいる役者さんはプロの方々なので、そこに自分がついていけるような演技をできるのか不安はありましたが、やりたいことを精一杯できたので、それがとても良かったなと感じています」(和合さん

ドラマ初出演という和合さんは、車椅子の高校生・ハルが自分に見えないよう演じることを意識したという。

「ハルちゃんは同じ年齢で同じ障害を持っていて、性格も被るところが多かったのですが、ハルちゃんが私に見えてしまうと、ハルちゃんではなくなってしまうので、どう自分の要素をなくすかっていうことを考えました。

ハルちゃんの芯のあるところはすごく素敵だし、何よりお芝居が好きっていう気持ちがすごく強くて。モチベーションや意識が高いところを尊敬しています。だから私も撮影も頑張れました」(和合さん

伊藤さんは、障害のある俳優を起用するために奮闘するプロデューサー役を演じる上で、本作の南野プロデューサーが身近にいたことが大きかったという。

「私は、今までいろんな現場でスタッフさんの様子を見てきましたが、プロデューサーさんの企画が通って、ドラマを作るまでの流れを見る機会はありませんでした。モノづくりの現場での苦悩はいちばん興味深く、取材感覚でしたね。

プロデューサーさんは撮影中のモニターを見ている時、どこに注目していますか? といった、細かいところも教わりました。今後、私がドラマに関わる上でも、またそういったところに注目したくなるくらい、みんなでモノを作るのは楽しいなと思います」(伊藤さん

南野プロデューサーは、伊藤さんと和合さんを起用した理由についても明かした。

「伊藤さんにお送りした4枚のお手紙には、起用したい理由を書きました。ドラマや映画で伊藤さんを何度も拝見してきて、人間の感情が画面の外に伝わってくるような、同世代としてすごく共感できる、魅力的な演技をされる方なので、いつかご一緒してみたいと思っていまして。

未来というキャラクターは、ドラマが好きという強い思いを持っています。相手に踏み込みすぎて、初めはハルちゃんとの関係もうまく築けない中で、そこを突破する力みたいなものが必要だったので、伊藤さんはまさにピッタリなんじゃないかなと思いました」(南野さん

一方の和合さんについては、東京パラリンピックの開会式をテレビで見て、「すごい女の子が出てきた!」と感じていたという。

「ご出演いただく障害のある俳優さん探すにあたり、いろんな事務所や劇団にオーディション受けてくれませんかというお知らせを送りました。そうしたら、和合さんからの応募があって。

お会いするのがとても楽しみだったのですが、いざお会いしたら、しゃべりも上手で、自己紹介もすばらしい! さらにお芝居をしていただいたら、初めてなのに堂々としていました。まさに、キラキラ光る原石。お会いした瞬間に『あ、ハルちゃんだ』と、びびっと来ました」(南野さん

左から、南野、伊藤、和合

会見の最後に、伊藤さんと和合さんがドラマの見どころなどについてメッセージを送った。

「物語は、未来がハルちゃんに出会ってスタートしていくのですが、未来自身が初めてのことを体験し、いろんな障壁にぶつかりまくり、失敗しまくります。

誰かを傷つけてしまうことを何度も繰り返しながら、ハルちゃんに出会い、どうやって未来がドラマを完成させるかという成長物語だと思うので、そういったところにも注目してください」(伊藤さん

「このドラマは勇気や元気を与えてくれる作品だと思っています。私の好きな言葉に『人を傷つけるのは人だけれども、人を元気にしてくれるのも人』というのがあるのですが、それがすごくしっくりきました。

短くて簡単な言葉ですが、深い意味があるなと思っています。セリフ以外のところでも胸に響く部分がたくさんあって、それが、私が『パーセント(%)』を好きな理由です」(和合さん


土曜ドラマ「パーセント(%)」(全4回)

5月11日(土)スタート
毎週土曜 総合 午後10:00~10:50
翌週水曜 午前0:35~1:25(再)※火曜深夜
毎週土曜 BSP4K 午前9:25~10:15

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。