年末、高校放送部の顧問など校内放送の指導者を対象にした研修会「校内放送指導者講座」が東京都内で開催されました。

NHK杯全国高校放送コンテスト関連の年末恒例イベントです。NHK財団は、事務局としてこのイベントを運営し、講師の派遣も行っています。そのイベントの様子をご紹介します。


〇「放送部の甲子園」へ 顧問の先生たちの研修会

NHK杯全国高校放送コンテスト(主催:全国放送教育研究会連盟、NHK 共催:NHK財団)は、放送部等に所属する高校生が日頃の校内放送活動の成果として、アナウンス、朗読、番組制作の技術や表現などを競うコンテストです。

「放送部の甲子園」とも言われ、2023年度・第70回大会には全国から1,426校、12,679名が参加しました。

校内放送指導者講座は、コンテストに参加する放送部等の活動の指導にあたる顧問の先生方を対象とした研修会です。参加者は、顧問として、また、コンテストの審査員として必要な知識やノウハウ等を学びます。

顧問歴の浅い先生からベテランの先生までさまざまなキャリアの先生が全国から集まるため、情報共有や親睦の場にもなっています。昨年は12月27日(水)と28日(木)の2日間、千代田放送会館で開催されました。会場には全国から70名の先生方が集まり、オンラインでも61名の先生方が参加しました。

今回の講座には次の4つのプログラムが設けられました。

<1日目>
講座1「力を合わせてやっています-長崎のやり方と私の考え方-」
 講師:広松由美先生・福田ゆり子先生(長崎県立長崎北陽台高等学校)
講座2「アナウンス・朗読 模擬審査」
 講師:山田敦子アナウンサー(NHK財団 ことばコミュニケーションセンター 専門委員)
<2日目>
講座3「番組制作の現場における AI の実情と今後の将来像」
 講師:田中瑞人センター長(NHK メディアイノベーションセンター)
講座4「番組 模擬審査」
 講師:白井健大チーフ・プロデューサー(NHK 第1制作センター)

聴き手へのホスピタリティの大切さを語る広松先生

〇講座1:アナウンス・朗読部門 指導のポイントは

講座1ではアナウンス・朗読部門で数多くの入賞者を輩出している長崎県の2人の先生が自身の経験をもとに、指導の考え方やポイントを話しました。

講師のひとり、広松由美先生はご自身も高校生のときに朗読部門で上位入賞した実績の持ち主。「朗読は聴き手と一緒につくるもの」という考えのもと、伝わる朗読をするために「話しことばのルールに従って読む」「息づかいを意識する」「内容に沿った変化をつける」ことなどを意識して指導しているそうです。

生徒の練習風景も音声で紹介し、参加した先生方はその具体的な指導のノウハウを持ち帰ろうと熱心に耳を傾けていました。


本番さながらの緊張感が漂う模擬審査

〇講座2:アナウンス・朗読の模擬審査

続く講座2では、アナウンス、朗読それぞれ4名ずつの発表(録音)を聞いて採点する模擬審査が行われました。審査対象の音声データはいずれも全国大会の準決勝に進出した発表のもので、力量の差がほとんどありません。

どのようなところで差がつくのか、それを聞き分けるべく、参加者は本番さながらの真剣さで審査に取り組みました。

審査のポイント講習では、講師の山田敦子アナウンサーから「“読み”のイントネーションになりがちなので話しかけるように」「朗読のセリフは芝居ではない。地の文にセリフのヒントがあるのでそれを活かすとよい」などのアドバイスがありました。

日頃の指導にも通じる内容で、うなずきながらメモを取る姿が多く見られました。


AI活用の最新事情を語る田中センター長

〇講座3:AI活用の最新事情 教育現場はどう向き合うか

2日目は、AI活用の最新事情に関する講演で始まりました(講座3)。このパートは、生成AIの登場が教育現場や放送コンテストに与える影響を考えるきっかけにしたいという趣旨で企画されたものです。

生成AIの活用が制作業務の飛躍的な効率化につながる可能性がある一方、人権侵害や著作権侵害などさまざまな課題も指摘されています。

講師の田中瑞人・NHKメディアイノベーションセンター長は、この講演を「AIをとりまく課題にどう向き合っていくのか、また、私たちが実現したい未来はどのようなものだろうか」という問いで締めくくりました。

参加者は、教育現場でもこの課題に正面から向き合い、考えていかねばならないことをあらためて認識しました。


グループ討議に耳を傾ける白井チーフ・プロデューサー

〇講座4:番組制作部門の模擬審査 「ねらい」が大事

講座4では番組制作部門の模擬審査が行われました。講師の白井健大チーフ・プロデューサーからは、番組を制作する上でもっとも大事にしている「ねらい」についてお話がありました。

伝えたいメッセージを常に意識し、制作の全プロセスを通じて「何を伝えたいのか?」「なぜそれを伝えたいのか?」「何のためにそれを伝えたいのか?」と問い続けることが大切です。

模擬審査後のグループ討議でも活発な議論が交わされ、審査の観点のみならず番組制作や指導方法について幅広く学ぶ機会となりました。


〇コンテスト決勝は7月25日 

今回の研修会で顧問の先生方が得た知識や技術は、日頃の校内放送活動を通して高校生たちに伝わります。その成果を発表する場のひとつがNHK杯全国高校放送コンテスト。

2024年度・第71回NHK杯全国高校放送コンテストは3月末頃に要項発表、7月25日(木)に決勝が開催される予定です。

全国大会出場を目指した番組の制作が始まると、みなさんのまわりでもカメラやマイクを持った高校生の姿を見かけるかもしれません。そんなときは、どうぞあたたかな目で見守ってください!


NHK杯全国高校放送コンテストの情報は以下のウェブサイトに掲載されています。

放送教育ネットワーク(おもに指導者向け)
https://hosokyoiku.jp/ncon_h/

NコンWEB(おもにコンテストに参加する生徒向け)
https://www.nhk.or.jp/event/n-con/ 

(文/NHK財団 展開・広報事業部 阿部真弓)