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増田明美さん(60歳)は女子マラソンでオリンピックに出場するなど陸上競技選手として活躍。現在はスポーツ解説などで人気です。
その増田さんが師と仰いだのが、8年前に亡くなった、放送作家で作詞家の永六輔さん。増田さんにとって、永さんはどんな存在だったのでしょうか。
聞き手/山下信
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年3月号(2/16発売)より抜粋して紹介しています。
──永さんからは、どんなことを教えてもらったんですか。
増田 本当にたくさんあるんですけれども、まずは取材の大切さでした。世界的な陸上競技の大会で解説をするときに「どうすれば永さんのようににおいが伝わるお話ができるんですか?」って尋ねたんです。
永さんは「取材は“材料を取る”って書くでしょ。私はね、会いたい人がいたらどんなに遠くても実際に会いに行きます。そのときに肌で感じ取ったことをマイクの前でお話ししているだけですよ」っておっしゃったんです。
それ以来、注目する選手がいれば実際に練習を見に行き、そこで感じたことや聞いたエピソードなどを自分でノートにまとめて解説の材料にしています。
解説の仕事では大体、事前に放送局から資料が送られてくるんですが、永さんとお会いしなければ、私は事前資料と自分の経験だけで語る解説者になっていたかもしれませんね。
未知の世界に導いてくれた
──どのようにおつきあいが続いたんでしょうか。
増田 「東京やなぎ句会」という、永さんが楽しみにされていた句会にも連れていっていただきました。柳家小三治師匠、小沢昭一さん、俳優の加藤武さんなど、そうそうたるメンバーがいらっしゃって。
──永さんが増田さんをこの句会に誘ったのには何か理由があったんですか。
増田 多分、私の話が長かったから(笑)。ラジオ番組で永さんに言われたことがあるんですよ、「あなた20秒で話せるところを1分かけてしゃべってる」って。
「言葉のぜい肉を取るためには俳句がいいですよ」と勧められて、4回ほど句会にご一緒しました。言葉を大切にする座の空気に触れられたことは、私の財産になりました。
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──増田さんのテリトリーであるスポーツに永さんを誘ったこともあるんですか。
増田 新聞でジョギング講座の記事を連載していたときに、講座の担当者から「著名人のゲストを1人呼んでほしい」と依頼されて。永さんにお声掛けしたら、「私でよろしければ」と快く引き受けてくださいました。
永さんには走るというより歩き方などをアドバイスすることになると思っていたら、違うんですよ。
永さんは放送作家でしたから、「日本橋から東海道を歩きましょう」とか、「舞台での役者の歩き方は特別なので取り上げましょう」など、記事になるようなテーマを率先して見つけてくださって。その思いがありがたく、すごく書きやすかったですね。
※この記事は2023年11月13日放送「師匠を語る」を再構成したものです。
「永六輔さんは“お日様”のような方でした」増田明美さんのお話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』3月号をご覧ください。
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