これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
今回は、番組視聴者の高校野球好きのイナガキヒデちゃん5歳(本当は+60歳)から届いたギモンをおさらい。「この夏、高校野球を見ていて、ふと思ったのですが、応援団の言っている〝フレーフレー〟って何なのでしょうか?」
答え:早稲田大学野球部が輸入した掛け声
詳しく教えてくれたのは、早稲田大学野球部部長で、政治経済学術院の川口浩教授。あの掛け声は、明治時代に渡米した早稲田大学野球部がアメリカから持ち帰ったものだと言います。
早大野球部が生まれたのは、1901年。しかし当時、野球の強豪校といえば、慶應義塾大学部、学習院、旧制第一高等学校(現・東京大学教養学部など)の3校でした。
そこで、部員たちを奮い立たせるため、初代早大野球部部長・安部磯雄教授がした提案は……「もしも強豪3チームに勝ったら、諸君らをアメリカに連れていこう!」。
結果、1904年に早大野球部は、強豪3校に全勝。しかたなく(?)翌年、安部部長は、莫大な渡航費用を大学に借金したり、早大創設者である大物・大隈重信の協力を得たりして、なんとかこの遠征を実現。野球の本場たるアメリカで、最新の道具や技術、戦術などを目の当たりにすることとなるのです。
「彼らは、アメリカで学んださまざまなものを日本に持ち帰りました。これは早稲田大学だけでなく、その後の日本野球を大きく変える出来事だったのです」と川口教授は熱く語ります。
そして、野球応援に欠かせない「フレーフレー」の掛け声も、このときに持ち帰られました。「フレー」は、もともと英語では「hooray(hurray)」。いわば「バンザーイ」のように、うれしいときなどに叫ぶ言葉ですが、おそらく、安部部長らが目にしたのは、当時のアメリカの「カレッジエール」。
学生たちが、おのおの大学名が書かれた小旗を持ち、リーダーの音頭に合わせて整然と応援するスタイルは、まだ日本には存在しませんでした。帰国後、これを早大野球部の応援方法として取り入れたのが、「フレーフレー」のルーツと考えられるのです。
ただし、その後アメリカでは、チアリーディングによる応援スタイルが確立。今では、「フレー」の言葉単体では、ほとんど使われていないそうです。
(NHKウイークリーステラ 2022年2月4日号より)