災害が起きそうなとき、起きたとき、何ができますか?
たったひとつのことばで、大切な人の命を守ることができるかもしれません。

記録的な豪雨など、異常気象や自然災害が増えるなか、「NHKアナウンサーによる命を守る呼びかけワークショップ」が全国で行われています。アナウンス室と各地の放送局が主催し、NHK財団が運営を担当しています。
先月、宮崎局で行われたワークショップの様子やアナウンサーの思いとともに、具体的な「呼びかけ」について紹介します。

宮崎放送局の会議室には、宮崎県内の交通機関や百貨店、リゾート施設、県の防災関係者など12人が集まりました。いずれも宮崎県内では誰もが知っている企業や施設の方々です。話し合ったのは「命を救うことば」

南海トラフ巨大地震が起きた時、それぞれの利用客などにどのような声をかけて、避難を呼びかけるかを考えました。

進行を担当したのは、宮崎局の神谷一鷹アナウンサー

学生時代から、防災のための情報伝達について学び、宮崎局では「防災まち歩き」というコーナーを担当し、防災士の方々と一緒にまちを歩いて、災害のリスクや備えについて考えてきました。

神谷アナウンサー
「皆さんのことばによって、地域の人たちが行動を起こし、命を助けることができるかもしれません。いざという時のことばを皆さんに考えてもらいたいと思います」

神谷アナウンサーが議論を深めるために紹介したのは、去年、NHKのホームページに公開された「命を守る“防災の呼びかけ”」。

NHKアナウンサーが大雨や熱中症、大雪の際に使う76の「呼びかけ」とその音声を掲載しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/suigai/yobikake/

これらの「呼びかけ」は、2011年3月の東日本大震災以降、1人でも多くの方の命を守ることを目指し、全国のアナウンサーが、関係部局とともに被災者や専門家への取材・調査を重ねて作り上げました。

これらは全国どこでも使える汎用性の高いもの。ワークショップでは、これらを参考により具体的に、それぞれの職場や地域で活用できるオリジナルの「呼びかけ」を考えます。

今回の想定は
南海トラフ巨大地震。宮崎県の広い範囲で震度7の揺れが観測され、大津波警報が発表。高さ16メートルの津波の第一波が18分後に到達する見込み」

皆さんは、自分の身を守ったうえでどのように呼びかけますか?

3~4人のグループに分かれて、それぞれの考えた呼びかけのアイデアを話し合いました。

その後、みなさんの「呼びかけ」を発表。

それぞれの施設によって呼びかける内容は異なる上、同じ施設でも、上層階にいる人はそのまま、1階にいる人は上層階に、など命を守るために必要な行動は異なります。

外国人が多く訪れる施設からは、「地震の経験が少ない外国人のお客さんは、外に出ようとしがち。津波の恐れがある場合は、施設内の高い階にとどまってもらうよう呼びかけたい」という声もありました。

ふだんの放送とは違う、より強い口調での呼びかけなど、アナウンサーならではの呼びかけのコツも披露されました。

神谷アナウンサー
「全く異なる業種や立場の方々に集まっていただけたことに感謝しています。命を救うための言葉について本気の意見交換ができました」

「ワークショップをきっかけに、職場の避難マニュアルの見直しを行うという企業もありました。また、過去の災害の経験をもう一度思い出し、防災に取り組むきっかけになったと話してくれる方もいました。防災についての対策を具体的に進めることにつながったことを本当にうれしく思います」

「ワークショップで出たご意見の中には、私たちの気づいていなかった視点からのことばもたくさんありました。私たちもこのワークショップをきっかけに、より視聴者のみなさんに届く呼びかけを練り上げていきます」

同様のワークショップは、今年度、全国10か所で開催または開催予定です。

災害報道で磨き続けたNHKアナウンサーのことばとノウハウで地域の安心安全に貢献する。新しい社会貢献が広がっています。

(NHK財団ことばコミュニケーションセンター/ 伊藤源太)