新・介護百人一首

信号を
渡ると見える
病室の
窓にうつるは
母の手の影

愛媛県吉田 加代子 60歳)

鳥取県 嶋田幸枝

詞書

駐車場に車を停めて、信号を渡る。その時、必ず病室の窓を見た。母の体調によっては、つらい時も嬉しい時もあり、私が介護の勉強をするきっかけになったのが母の介護でした。体調のよい時の母を思い出し、詠んだ歌です。

感想コメントをいただきました

市毛良枝

入院すると家族の面会が病人の最大の楽しみです。見舞う家族も、病人をひとりにさせないよう気遣います。道に面して病室があり、窓から病室の中は見えていなくても、うつるお母様の手の影が見える。その影は、家族が来るのを待っている。通うのは大変でも、病室では普段はしない会話ができたり、そこで分かち合えた時間が貴重です。このことが介護を勉強するきっかけとなったのでしょう。そんな想像が膨らみます。

市毛良枝

静岡県生まれ、俳優。文学座附属演劇研究所、俳優小劇場養成所を経て、1971年ドラマ「冬の華」でデビュー以後、映画・テレビ・舞台と幅広く活躍。現在は、母の介護の経験を通じ、執筆活動や講演も行っている。趣味の登山をいかし、特定非営利活動法人 日本トレッキング協会理事、環境カウンセラーの資格を持つ。「73歳、ひとり楽しむ山歩き」(2024年2月発行 KADOKAWA)が好評発売中。