新・介護百人一首

食事中
あらゆるフロアで
こだまする
食べてほしくて
「あともう一口」

東京都安田 樹貴 19歳)

詞書

中々食が進まない利用者さんに対して、つい言ってしまう一言。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子

生きるために食べることは絶対大切だし、食べないと体力が落ちてしまうから、どうか一口でも。私の母も最期、有料老人ホームにお世話になって、「食べない」という問題がネックでした。「毎食、数口しか食べられない日が続いています」という報告を受けると、本当に心配になり、母が食べる可能性があるものを記憶の中から必死で探し差し入れに行きましたし、職員の方も必死で探してくださいました。とうとう母がなくなったとき、職員の方が恩蔵さんメロンパンだけは食べてくださったから、と母の霊前に供えてくださったとき、感謝の気持ちが溢れました。介護職の皆様には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

恩蔵絢子

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2022年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。