新・介護百人一首

比叡山
千日回峰の
修行だと
施設の父は
廊下を歩く

茨城県八塚 容子 59歳)

埼玉県 伊藤フサ子
愛知県 匿名希望

詞書

九十一歳の父は施設の廊下を比叡山千日回峰行と称し、毎朝歩いています。施設の方々に見守られ千日続けて元気に結願を迎えられることを願っています。

感想コメントをいただきました

茂木健一郎

仏教において、もっとも厳しい修行として知られる千日回峰の修行。実際には千日に満たない日数で満行とするのは、残りの修行は人生の中でやるという意味だと、以前、千日回峰を二回達成された大阿闍梨、酒井雄哉さんにうかがいました。施設に入っている御父さまにとって、廊下を歩くことが、まさに人生の修行の場。そのことを自ら「比叡山千日回峰の修行」だとおっしゃるお父様の矜持、そしてユーモアのセンスに心打たれます。

茂木健一郎

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。