新・介護百人一首

声高く
「あ」のつく歌から
順番に
母と歌えり
春のドライブ

奈良県森村 貴和子 71歳)

岐阜県 森下琴心

詞書

認知症と診断された母のもとへ時間を作って通いました。目的の一番は母と歌うことでした。二人で「あ」のつく歌は?と言いながら十も二十も歌いました。

感想コメントをいただきました

茂木健一郎

子どもの頃、誰でもやった記憶のある歌合戦。遠足や家族旅行のときに、声をはりあげて歌った記憶は幸せの原風景です。時が流れ、「春のドライブ」の折に、お母さまと歌うそのかけがえのない時間。「声高く」、「「あ」のつく歌から順番に」という記述には、思わず読者をほほえませる力があります。どんな歌をうたったんだろうと想像力を刺激される歌です。今度の大切な人との旅行の際には、自分たちもまた、「あ」のつく歌から歌ってみようという気持ちにさせられます。

茂木健一郎

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。