新・介護百人一首

印刷の
操作忘れた
父よもう
買うな六色
プリンターなど

東京都佐野 一郎 63歳)

東京都 沢田栄子

詞書

九十五歳の父はプリンターで葉書の文章を印刷するのを楽しみにしていますが、一昨年あたりから印刷の操作を忘れてしまい、壊れていないのに高価な六色刷りのプリンターを買ってしまいました。もう買わないで欲しいです。

感想コメントをいただきました

吉田潮

六色プリンター、高いですよね。補充するインクですらも高価。高解像度の写真を印刷するならまだしも、基本は葉書の文章のみ。しかも操作方法を忘れているのに買ってしまう父に、怒りというよりは「親の老いに対する哀愁」を感じている心象も伝わります。家電でさえも操作がおぼつかなくなる高齢者の、ハイスペック商品購買意欲をどうなだめたらいいのやら。もしもう1台購入してきたら怒ってもいいのでは、と思います。

吉田潮

ライター・コラムニスト・イラストレーター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業。健康誌や女性誌の編集を経て、2001年よりフリーランスライターに。週刊新潮、東京新聞、プレジデントオンライン、kufuraなどで主にテレビコラムを連載・寄稿。NHKの「ドキュメント72時間」の番組紹介イラストコラム「読む72時間」(旧TwitterのX)や、「聴く72時間」(Spotify)を担当。著書に『くさらないイケメン図鑑』、『産まないことは「逃げ」ですか?』『親の介護をしないとダメですか?』、『ふがいないきょうだいに困ってる』など。テレビは1台、ハードディスク2台(全録)、BSも含めて毎クールのドラマを偏執的に視聴している。