新・介護百人一首

見えぬ眼が
母の動きを
追っている
気づいた母が
それにうなづく

埼玉県坂本 孝子 81歳)

詞書

交通事故に遭い、植物状態となった弟は、1年間を病院で、3年間を実家で、母の看護で命を継いでいました。開いていても見えない眼。話すこともできず、母が呼びかけるときだけピクッとしたそうです。親子の情愛でしょうか。37歳の短い命でした。

感想コメントをいただきました

asaco

思いがけず全ての自由が奪われた弟さんは、一体どんな気持ちだったのでしょうか。ちっぽけな私なんかでは到底想像もつきませんが、病院から実家へと移り、家族に温かく見守られた3年間は彼にとってかけがえのない時間だったはずです。そんな彼が、決して見えることのない目で、それでもずっと追い続けた母の気配。親子というのはいかなる状況でも、子は親に頼りたいし、親は子を守りたいもの。変わらない愛の形です。

asaco

1978年静岡県浜松市生まれ。2男2女のママ。モデルとして雑誌・webやCMなどに出演。子育てにまつわるコラム執筆や、企業の広報PRなど多方面で活動中。2022年よりNPO法人neomuraの理事に就任し、地域活性にも携わる。