新・介護百人一首

みちのべに
義母ははと菜花と
葱坊主ねぎぼうず
デイサービスの
車待ちおり

香川県北村 節子 55歳)

神奈川県 吉田文子
埼玉県 佐々木美知子
香川県 匿名希望
埼玉県 木野田博彦
東京都 沢田栄子
愛知県 塩田愛音

詞書

義母は通い始めたデイサービスを意外と楽しんでくれているようだ。週二回少しおしゃれした義母をありがたいような、申し訳ないような気持ちで見送る。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子

親にデイサービスに通ってもらうことは、親のことを自分が放棄してしまうようで申し訳ない、という気持ちが生じるものですが、春に新生活を始める子どもたちや、若者たちと同じに、老年期にも、新しい人達に会い、新しいことを学ぶ楽しみがあるということが、この歌には表れているように思います。私は幼稚園の時毎日バスに乗っていったことを思い出しまして、もしかしたら私の親も、 子供こどもを初めて他人に預けることは同じように怖かったのではないかな、と親の気持ちを想像することもできました。

恩蔵絢子

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2021年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。