新・介護百人一首

反応は
なけれど聴覚
残れると
母の大好きな
歌を聞かせる

青森県木立 徹 65歳)

愛知県 大竹カオリ
愛知県 中田麟海
愛知県 川嵜鈴
埼玉県 木野田博彦

詞書

母の看取みとり最後の日です。いくら呼んでも反応はありませんでしたが、母が大好きだった唱歌をいくつか聴かせたらうなずいているようでした。そして母は静かに息を引き取りました。

感想コメントをいただきました

市毛良枝

別れの瞬間。誰も経験したことはないけれど、意識がなくても耳は聞こえていると言います。聞こえなくてもいいから届いてほしいと願う、切々とした思いが伝わり、胸が痛くなりました。切迫した時間なはずですが、お母様を送る温かい気持ちが伝わります。ありがとうの気持ち、きっと届いていますね。

市毛良枝

静岡県生まれ、俳優。文学座附属演劇研究所、俳優小劇場養成所を経て、1971年ドラマ「冬の華」でデビュー以後、映画・テレビ・舞台と幅広く活躍。現在は、母の介護の経験を通じ、執筆活動や講演も行っている。趣味の登山をいかし、特定非営利活動法人 日本トレッキング協会理事、環境カウンセラーの資格を持つ。「73歳、ひとり楽しむ山歩き」(2024年2月発行 KADOKAWA)が好評発売中。