新・介護百人一首

兵たりし
君ぞとつま
励まして
痩せに痩せたる
背をさするなり

大分県大塚 常代 91歳)

詞書

シベリアの極寒と飢えに耐えて日本の土を踏んだと常に自慢していた夫です。

感想コメントをいただきました

鎌田 實

五七五・七七の中に、見事に一人の男の人生を表しています。日本を守るために働いてくれたご主人。厳寒のシベリアは、さぞつらかったと思います。それでも耐えて帰国。
「兵たりし君ぞ」という言葉が、ご主人の中にある自尊の心を刺激し、年齢や病気に負けないよう、妻が夫を支える姿が目に浮かびます。
91歳。介護に負けていないのがすばらしいです。

鎌田 實

1948年生まれ。医師・作家。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり赤字病院を再生。地域包括ケアの先駆けを作った。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET顧問、地域包括ケア研究所所長、風に立つライオン基金評議員(他)。武見記念賞受賞。