新・介護百人一首

寝返りを
打てない母を
寝返らせ
支援ベッドは
月へ傾く

滋賀県ペンネーム 近江 菫花 59歳)

埼玉県 木野田博彦
鹿児島県 ペンネーム 大隅太郎

詞書

亡き母は寝返りを打てない状態でしたので体位変換が大変でしたが、支援ベッドを利用するようになり、とても楽になりました。左右に少し傾くのですが、左に窓があったので月へと傾くように思いました。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子

体力を落として自分で寝返りが打てなくなる。私の母も、最期の1ヶ月どうしてその姿勢でずっといて苦しくないの? と思うほどベッドの上でじいっとしていました。周りは褥瘡じょくそうができては大変だから定期的に体位を変えなければならない。それで自動的に傾きをつけて体位を変えてくれる支援ベッドを使うこともある。本人がびっくりしないようにゆっくりと傾いてくれるベッド。楽にはなるけれども、自分の手を離れていく寂しさも、描かれているように思いました。

恩蔵絢子

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2021年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。