新・介護百人一首

彗星すいせい
しっぽみたいに
カニューレを
ひけば歩ける
どこまでだって

兵庫県大江 美典 36歳)

愛知県 小西宇宙

詞書

COPD(慢性閉塞性肺疾患)で酸素が手放せない祖父は、それでもカニューレをひきずりながら精力的に活動しています。

感想コメントをいただきました

茂木健一郎

身体を支えてくれる医療器具は、大切なもの。現代の医学、テクノロジーの粋が集まっています。そのうちの「カニューレ」を、「彗星のしっぽ」と例える詩情とそこはかとないユーモアのセンスが、すばらしいですね。「ひけば歩けるどこまでだって」という言葉に、限りない生命力、前向きに生きる力が感じられます。そして、カニューレをひいて歩いているその姿のまわりには、医療や介護にたずさわっているたくさんの方々の思いが星々のように輝いているのです。

茂木健一郎

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。