新・介護百人一首

妻逝きて
電話とだえ
文もなし
遺影に座して
時は止まるや

神奈川県植村 貞夫 85歳)

愛知県 佐々木夏美
山口県 有久園子

詞書

毎年、介護の三首を投稿してきましたが、今年は訃報に変わった淋しい。

感想コメントをいただきました

鎌田實

寂寞せきばくという言葉が頭に浮かんだ。
奥さんが亡くなってからは、電話も来ない。手紙もこない。心が満たされず、物寂しい姿が目に浮かびます。
これまでは、介護の辛さを歌にして来た。しかし、その介護する相手もいなくなってしまった。その現実をまた歌にして、悲しみや寂しさを客観視することによって、歌詠み人の作者の植村さんはきっと立ち直っていくのだと思います。
短歌に力があるということを、感じさせてくれました。素晴らしい歌。ありがとうございます。

鎌田實

1948年生まれ。医師・作家。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり赤字病院を再生。地域包括ケアの先駆けを作った。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET顧問、地域包括ケア研究所所長、風に立つライオン基金評議員(他)。武見記念賞受賞。