アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」2期
Eテレ 毎週日曜 午後7:00~7:25
☆NHKアニメホームページ https://www.nhk.jp/g/anime/
前編はこちらから!


ラブライブ!シリーズの主人公として配されたスクールアイドルグループは、これまでも先輩・後輩で年齢差のあるメンバーによって構成されてきました。しかし、年齢差こそあれども、グループの結成においてはほぼ同期。明確に後発メンバーとして年下の子が加入する展開は、実は「ラブライブ!スーパースター!!」が初めてになります。

改めて確認しますが、今回の物語の序盤で、問題として持ち上がっていたのは、2年生たちと1年生たちの実力の差です。成長著しい10代、ただでさえ1年の差は大きなもの。2年生の澁谷しぶやかのん、タン 可可クゥクゥあらし 千砂都ちさとあん すみれ、づき れんたちはあまり意識していませんでしたが、実のところハイスペックな素質を持っています。さらにスクールアイドルとしての厳しい練習をみっちりと積み重ねてきて、次の大会の優勝候補と目されるほどの実力者に仕上がっていました。後輩の1年生たちがついていくには、平凡な努力では間に合わないのです。
 

©2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

それでいて、Liellaリエラ!はいまだチャレンジャー、追いかける立場の存在でもあります。大会での優勝経験はゼロ。まったく結果を残していないわけではないものの、まだまだ上を見据えて歩まねばならない立場です。このジレンマ、どう解消されるのでしょうか? そして解消された先にある、ライバルたちとの対決や、いかに!? そんな燃える展開を勝手に想像してしまっています(笑)。

実は、NHKアニメには、こうした作品の系譜があるのではないかと考えています。具体的なタイトルとしては、野球少年・茂野吾郎の子ども時代から大人へと至る成長を描き、彼の子ども・大吾が主人公となった続編も制作された「MAJOR」があげられるでしょうか。ほかにも、現在劇場版が公開され、さらに新作の制作も発表された弓道ものの「ツルネ-風舞高校弓道部-」、また部活ではありませんが、ユースチームを舞台に10代のサッカー選手たちの世界を描く「アオアシ」もEテレで放送中です。

競技の特徴を丁寧に捉えた堅実なつくりの映像と、映像の印象と重なるような実直な成長物語の組み合わせ。その中で時に励まし合い、時に互いを刺激し合う若者たちをじっくりと追いかけたアニメを作ることができるのは、幅広い世代の視聴者を想定し、可能な限り普遍的なものづくりを目指すNHKの体制ならではだと感じます。
 

©2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

「ラブライブ!スーパースター!!」は、例えばメンバーのカラフルな髪の色などだけをポンと抜き出して見ると、そうした作品とは違ったゾーンを狙っているように見えてしまうかもしれません。しかしながら、ちょっと角度を変えた裏技的な見方として、NHKアニメのひとつの系譜に連なる、変則的な部活もの、スポ根ものとして見ることで、根底にあるNHKらしさ、間口の広さも感じ取ることができるのではないでしょうか。

戦後日本の国産テレビアニメの歴史も、随分と長くなってきました。アニメに抵抗があるという人は、もはや少なくなっているかもしれません。それでも、アニメそのものには抵抗がなくても、ちょっとアイドルの世界は縁遠いなあ……などと、感じている人は、意外といそうな気がしています。でも、もし、そんな方がいらっしゃったら、ここで書いた「NHKらしい部活もの・ティーンスポーツものの流れとして見る」ことを意識して、ぜひ一度視聴してみてください。新たな世界が、そこに広がっているかもしれません。アニメの世界は、それについて原稿を書くことを生業なりわいにし、日々視聴を続けている私ですらも時に驚かされるほど、豊穣なものですから。

1982年生まれ、愛知県出身。大学在学中から『New type』(KADOKAWA)などのアニメ雑誌で執筆活動を開始。これまで、NHK-FMの「ゆうがたパラダイス三森すずことアニソンパラダイス」などに出演してきた。著書は『オトナアニメCOLLECTIONあかほりさとる全集~“外道”が歩んだメディアミックスの25年』(洋泉社、オトナアニメ編集部との共編著)ほか。