アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」2期
Eテレ 毎週日曜 午後7:00~7:25
☆NHKアニメホームページ https://www.nhk.jp/g/anime/
去年10月、「NHK伝説のコンサート“わが愛しのキャンディーズ”」のリマスター版が総合テレビで放送され、大きな話題を集めました。オリジナル版の初回放送は2006年で、この番組のクライマックスにおかれたキャンディーズ解散コンサートは、1978年に開催されたもの。1982年生まれの私は当然、リアルタイムでのキャンディーズ人気の盛り上がりを知る由もありませんが、アイドルファンの思いは根強く、熱く、時を超えるものだと、こうしたデータを眺めていて痛感しました。
さて、キャンディーズは昭和を代表するアイドルですが、年号が変わって平成、そして令和にも、数々のアイドルが活躍しているのは、説明するまでもなく皆さんご存じでしょう。こうした一連の流れの中で、平成の後半以降に特徴的な現象が、ゲームやアニメ作品と連動したグループアイドルが多数登場してきたことです。ゲームやアニメに登場するグループアイドルのキャラクターに声をあてるキャスト陣が、現実の世界でもグループアイドルとして活動する。その代表例が、ラブライブ!シリーズから誕生した、μ’s、Aqoursといったグループです。
μ’s、Aqoursともに「NHK紅白歌合戦」のステージに立ったことがあります。アニメの映像を背景に、映像の中のメンバーたちと絶妙なシンクロを見せながら歌い踊る彼女たちのことを、ご記憶されている方も少なくないのではないでしょうか。巨大ドーム会場でライブを開催すれば、チケットは即日完売。いずれの事実からも、幅広い層からの熱狂的な支持がうかがえます。シリーズとしての展開はもはや10年を超え、こうした形でのアイドルグループの在り方は、すっかり確立されたといってもよいでしょう。
そんなラブライブ!シリーズの第4作となる「ラブライブ!スーパースター!!」のテレビアニメ2期が、Eテレで好評放送中です。1期の放送は、2021年7月から10月。およそ1年ぶりの新作になるわけですが、作品の勢いはそんなブランクをまったく感じさせません。
1期のラストから時は順当に流れて、スクールアイドルグループ・Liella!(この作品の世界では、学校の部活動のような位置づけで「アイドル活動」が行われています)のメンバーたちは、私立結ヶ丘女子高等学校の2年生に進学しました。
多くの人を引きつける天性の歌声を持っている澁谷かのん(CV.伊達さゆり)、スクールアイドルに対する圧倒的な知識と愛、そして目標に近づくためなら努力をいくらでも惜しまない根性をその身に宿した唐 可可(CV.Liyuu)、鍛え抜いたハイレベルなダンススキルの持ち主な嵐 千砂都(CV.岬 なこ)、豊富な芸能活動の経験を誇る平安名すみれ(CV.ペイトン尚未)、高い音楽の素養を備え、運動神経にも優れた葉月 恋(CV.青山なぎさ)。
新設校ゆえに先輩も後輩も存在しなかった彼女たちに、2期では1年生が入学し、そこから続々とLiella!に新メンバーが加入していきます。
後輩たちをあたたかく迎えたい気持ちと、より高みを目指さなければならない立場。かのんたちは、これまでとはまた違った問題に頭を悩ませることになります。新たなメンバーとして加入した桜小路 きな子(CV.鈴原希実)、米女 メイ(CV.薮島朱音)、若菜 四季(CV.大熊和奏)たち1年生の胸中も、Liella!の先輩たちへの憧れが大きいだけに、その実力差に引け目や焦りを強く感じてしまい、複雑です。そんなところに、Liella!を自分の動画配信に利用して、お金を稼ぐことばかり考えていた鬼塚 夏美(CV.絵森 彩)が参加。先輩後輩の混成チーム、9人になった新たなLiella!が一歩を踏み出しました。
ここからどう発展していくのか、楽しみでなりません。
「ラブライブ!」に始まり、「ラブライブ!サンシャイン!!」「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」そして「ラブライブ!スーパースター!!」と続いてきたこのシリーズ。前半で触れたように、現在、こうした形でのメンバーと演者が二重写しになるようなグループアイドルが多数存在しています。ということは、そうしたグループアイドルを中心に据えたアニメ作品も多数存在しているということ。
ラブライブ!シリーズはそうした作品群の中で、いうなればロボットアニメにおける「機動戦士ガンダム」シリーズにあたるような存在です(奇しくも制作会社が重なっているわけですが、それはさておくとして)。ある種の保守本流といいますか、このジャンルの王道的な魅力を備えながらも、同時にこのジャンルの可能性を革新し、進歩させる存在でもあります。
とりわけ「ラブライブ!スーパースター!!」は、元祖「ラブライブ!」で監督を務めた京極尚彦さんが監督を務めていることもあってか、このシリーズをさらに一歩前に進めようという意欲がより高いように見受けられます。
シリーズのライプパートは、以前から日本のアニメにおける3DCGを駆使したダンスシーンの、フラッグシップモデル的な存在でした。その凄味は、今作でも健在です。さらに日常を描いたシーンの、繊細なポージングや表情が堪能できる作画も充実しています。派手な見せ場ではない、何気ないシーンにもきちんと気を配り、飽きさせない作品づくりというのは、当たり前のようでなかなかできないことなのです。
そうした部分が、アイドルもの・音楽ものとして傑出した作品であるラブライブ!シリーズの“直球の”鑑賞法であるとするなら、「ラブライブ!スーパースター!!」、とりわけその2期ならではの革新的な部分はなんでしょうか。
それは部活もの、ティーンが主人公のスポーツもののテイストが濃厚に感じられる仕上がりになっていることだと感じています。
(後編へ続く)
1982年生まれ、愛知県出身。大学在学中から『New type』(KADOKAWA)などのアニメ雑誌で執筆活動を開始。これまで、NHK-FMの「ゆうがたパラダイス三森すずことアニソンパラダイス」などに出演してきた。著書は『オトナアニメCOLLECTIONあかほりさとる全集~“外道”が歩んだメディアミックスの25年』(洋泉社、オトナアニメ編集部との共編著)ほか。