7月18日(月・祝)に千葉県の流通経済大学・新松戸キャンパスで「海の日アートフェス~みんなでつながる・あなたとつながる~」が開催された。多様なアート(=表現)を通じて、大学と地域の人々のつながりを創出しようというイベントだ。
性別や年代、障がいの有無を超えて、互いに認め合うことでひとりひとりがつながり、社会のなかで誰ひとり取り残されないようにすることを目指している。

▼「海の日アートフェス」概要記事はこちら
https://steranet.jp/articles/-/725

この「海の日アートフェス」で特に注目したいのが、メインイベントとなる5つの「ACT」。

【ACT-1】知的障がい者チアリーディング
【ACT-2】 “⾳”のアート
【ACT-3】 であうアート
【ACT-4】トーイ&アート
【ACT-5】ダンス・パフォーマンス

同大学の学生たちが、互いにアイデアや意見を出し合い、開催日に向けて準備を進めてきたステージショーだ。早速、その魅力あふれる内容を紹介しよう!

トップバッターとなる「ACT-1」は、「知的障がい者チアリーディング」
来場者の注目が集まるなか、ユニフォームに身を包み、ポンを持って登場した障がい者チアリーディングのメンバーたち。全員で声を出し、楽しそうにポンを振る姿に、会場全体が温かい空気に包まれた。

ステージ終了後、一般社団法人日本知的障害者チアリーディング協会代表理事をつとめる稻山敦子さんにお話を伺った。

「地域の皆さんに障がい者チアリーディングの活動を知っていただきたいと思い、このイベントに参加しました。障がい者は、どうしても日常生活に苦労しますが、『かわいそう』とか『助けないと何もできない』という固定観念を払拭してほしくて。障がい者が、できることを懸命にやっている姿、純粋にチアリーディングを楽しむ姿を見てもらいたいと思っています」

また別会場では、「ACT-1」がはじまる前に、障がい者チアの体験会も実施された。この体験会のなかから、「知的障がい者チアリーディング」の舞台に上がった参加者もいる。その親御さんに感想を伺った。

「人前に出て発表するのが苦手だった息子が、スポットライトを浴びて、大きな舞台で演技をする姿を見て、とても信じられない気持ちでした。大好きなチアを仲間と一緒に演技するうれしさが緊張に勝ったようです。障がい者チアの活動をする皆さんの『応援される側から応援する側へ』という言葉が印象深く、いつか自分たちもこうなりたいと思いました。障がい者チアの活動を通して、障がいへの理解を深める場が広がってくれたらうれしいです」

明るくキラキラしたものが好きな息子さんが、何か自信を持ってできることはないかと探していたという。誰ひとり取り残さないことを目指している「知的障がい者チアリーディング」。会場を包んだ温かい空気こそ、その答えのように感じた。

「ACT-2」は、「音のアート」
同大学1年生の力石朝日さんが、口や鼻からの発声で音楽を創り出すヒューマンビートボックスを披露。華麗なる技に会場は大いに盛りあがった。

そこに、特別ゲストのTBS・皆川玲奈アナウンサーが詩の朗読でコラボ。ふたつの異なる音(声)の共演が物語の世界観をつくりあげる様は、まさにアート。息の合ったパフォーマンスで場を魅了した。

「ACT-3」の「であうアート」と「ACT-4」の「トーイ&アート」は、ホールで展示されている作品が創作されるまでの過程や背景、作品に込められた思いを紹介。
*「であうアート」と「トーイ&アート」については、こちらの記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

そして、ステージショーのトリを飾ったのは、「ACT-5」の「ダンス・パフォーマンス」
流通経済大学に、今年4月に創設されたダンス部によるパフォーマンスだ。指先からつま先まで、しなやかで力強く表現する部員たち。そのいきいきとした表情は、来場者の気持ちをパッと明るくしてくれる。

さらに、ダンス部・西山友貴監督による“即興ダンス”も披露された。

そして最後は、座ったままで参加できる「すわりダンス」で、来場者と一緒にパフォーマンス。会場全体がダンスでつながった。

ステージショー終了後、西山監督は「実は、今回がダンス部全員による初めての舞台。お披露目できてうれしいです!」と笑顔。

「また今回は、いろんな方々とダンスでつながることができました。表現方法が違っていても、思いは同じ。人と人とのつながりを、ダンスで実現できると私は本気で思っています。流経大のダンス部は、学生や地域の人と何か楽しいことを共有したいという思いで立ち上げました。この思いが広がり、多くの人がダンス部の活動を応援してくれるようになったらうれしいですね」

ゆくゆくは地域の人と踊ったり、動画を作ったりする活動を目指しているという。楽しく、そして熱く語る西山監督の人柄が、人と人をつなげていくのだと確信した。ちなみに、会場全体が釘付けになった“即興ダンス”は、自分の経験、記憶、会場の空気、そのときの気持ちなどをつなげて作るのだそう。

アートによる多様な表現で、多くの人々のつながりが生まれた「海の日アートフェス」。
今回の展示やステージショーには、今の時代をともに生きる人々が一緒に輝くことができる場所があった。流通経済大学と来場者が生み出した、この輝きを共有することが、共生社会の新たな一歩につながっていくのではないだろうか。同大学の次なる取り組みを期待して待ちたい。

イベント成功の裏に新人の活躍アリ!>執筆者メッセージ

私が今回、「海の日アートフェス」のプロジェクトに入って驚いたのは、関わる人たちの思いの強さ。出演者からはステージ演出に関するメールが毎日届き、企画会議は数時間に及ぶことも。それは「本当に良かったと思えるイベントにしたい」という皆の熱い思いからでした。

そして迎えた本番当日。
キラキラとパフォーマンスをする出演者、いきいきとした表情の学生たち、緊張感を持ってステージを見つめるプロジェクトメンバー、そしてわくわくした様子の来場者。関わるすべての人がすてきな表情をしているのを見て、イベント制作のだいはこれなんだと実感。

今回、立場や境遇が違う人々がつながり、ひとつのものを作る仕事に私は心が揺さぶられました。このイベントからの学びを生かし、これからも地域やそこで暮らす人々に貢献できるような業務に取り組んでいきたいと思います。それが私の“アート”ですから。

(取材・文/NHKサービスセンター 宇田川花奈)