7月18日(月・祝)に千葉県の流通経済大学・新松戸キャンパスで「海の日アートフェス~みんなでつながる・あなたとつながる~」が開催された。多様なアートを通して地域の人々とつながることを目指した、同大学の新たな取り組みだ。

▼「海の日アートフェス」概要記事はこちら
https://steranet.jp/articles/-/725

このイベントの運営や司会進行には学生たちが積極的に参加し、自分たちの手で、大学と地域の人々のつながりを創出しようとしているのが特徴。キャッチフレーズの「誰一人取り残さない。コモンズ(共有空間)を目指して」は、学生たちがみずから考えたものだ。

司会進行をつとめた3年生・長谷川莉子さんと、ステージショーで“ヒューマンビートボックス”を披露した1年生・力石朝日さんに、イベントに参加した感想を聞いた。
また、流通経済大学が今回の取り組みを推進する目的について、龍崎孝副学長に伺った。


〇ステージショーの司会進行を担当
 3年生 長谷川莉子さん

落ち着いた司会ぶりをみせた長谷川莉子さん(写真右)

司会のお話をいただいてから本番までの期間が短く、練習もなかなかできない状況だったので、最初は不安が大きかったですね。でも、皆と協力することでなんとか役目を果たすことができました。

今回、司会を担当させていただいたことで、「話し方」や「伝え方」について学ぶことができました。就職活動や将来のスキルとして、これからも磨きをかけていきたいです。また、イベントには多くの学生が運営に関わっていたので、仲間と協力しながら、連携をとることの大切さを学ぶこともできました。

終わってみると、本当に楽しかったなと感じています。来場者の方々にも、心から楽しいと思っていただけたらうれしく思います。


〇「“音”のアート」でヒューマンビートボックスを披露
 1年生 力石朝日さん

ステージ上で華麗なパフォーマンスを披露する力石朝日さん

本番のステージでは緊張もあったのですが、自分がやってきたものを出そうという気持ちのほうが強かったです。思ったよりいいパフォーマンスができました。

ヒューマンビートボックスは、ある程度音程の決まった楽器と違い、人の口や鼻からの発声によって今までにない音を生み出せるのが魅力です。

これまでずっと続けてきたことが、今回のステージにつながりました。何事も継続することで、ひとつの成果が得られるのだと思いました。これからも多くのこと学び、自分が興味を持った分野はとことん突き詰めていきたいです。


〇共生社会の実現を大学から推進
 流通経済大学 龍崎孝 副学長

地域の方々への感謝を伝える龍崎孝副学長

これまでコロナ禍により大きなイベントが開催できなかったので、「海の日アートフェス」に多くの皆さまに集まっていただき、たいへんうれしく思います。

今回のイベントの目的のひとつは、地域の方々への感謝です。流通経済大学のキャンパスは茨城県・龍ケ崎と、ここ千葉県・松戸にあり、日ごろから地域の方々にたいへんお世話になっています。地元の皆さまに大学をもっと身近に感じていただくことで、交流を深めていきたいと思っています。

もうひとつは、流経大のダイバーシティーへの取り組みです。それはマイノリティーの方々に何かをお願いされるのを待つのではなく、みずから進んで行動することの大切さを学ぶことです。

例えば、障がい者アートや障がい者チアに参加している方々に、「私たちはこんなことができるんですが、いっしょにやりませんか?」と声をかけ、協力しあっていくような意識。地域の方々とつながるなかに、学びがあると考えています。

また、そのなかで学生が主体となって取り組むことを大切にしたいと思っています。学生の持つ力を引き出すには、時間をかけて行うことも大切ですが、時には瞬発的に行うことも必要です。今回のイベントでは、制作のプロの方々とともに、学生がスタッフとして参加し、積極的に取り組んでいます。これが流経大の実学です。

当初は、私から学生たちに「こんなイベントをやってみませんか」と声をかけたのですが、何をやっていいかわからないといった雰囲気でした。しかし、本番が近づくにつれ、学生たちの顔が引き締まってきて。当日は皆、やる気にあふれていて、とても頼もしく感じました。

実際に、それぞれの「ACT」(ステージショーや展示)が本当にすばらしかったです。来場者の方が、「障がい者チアってすてきだね」、「流経大のダンスってすごいな」と、それまで知らなかった取り組み(や活動)に触れ、感動していただくことを大事にしていきたいです。

このイベントのフィナーレの瞬間は、そんなつながりを実感することができました。会場にいる皆さんが本当に楽しそうで、イベントに来てよかったという思いがあふれていました。

これを見て、自分たちもこのアートフェスのステージに参加したいという地域の方がいらしたら大歓迎です。ご年配の方でしたら、尺八の演奏かもしれません。そんなふうに、この取り組みが縦横に広がってつながっていくのが理想です。そして、いつか、私たちが脇役にまわる日が来たらうれしいと思っています。


地域社会への貢献として、学生とともに新たな挑戦をはじめた流通経済大学。
その取り組みのなかには、多くの出会いや学びがあった。それらがつながり、つくり出す未来は、共生社会の実現に向けた可能性に満ちている。同大学がハブとなって、人と社会をつなげていく試みは、社会にどのような価値をもたらすのか、今後も注目していきたい。
(取材・正木菜々瀬)

1999年、茨城県生まれ。女子校出身のトランスジェンダー。当事者としての経験をもとに、理解ある社会の実現に向けて当事者から性に悩み戸惑う方、それを支えようとする方への考えを発信する活動に従事する。