「アロマンティック・アセクシュアル」の男女が、周囲の反応や価値観の違いに戸惑いながらも“家族(仮)”として歩む姿を描き、大きな話題を呼んだよるドラ「恋せぬふたり」。
その脚本を手がけた吉田恵里香さんは、優れたテレビドラマの脚本作家に与えられる名誉ある「第40回向田邦子賞」を受賞。
5月12日に行われた駒澤大学でのトークイベントに参加した吉田さんに、エンターテインメント(ドラマ等)への期待について聞きました。(インタビュー前編はこちらから)

  昨今、テレビを見ない“テレビ離れ”が進んでいるとされていますが、吉田さんは今後ドラマを描く意義についてどのように考えていますか?

“テレビ離れ”については悲観的に考えていなくて。ネット配信も進んでいるので、その人に合う形でドラマを見る機会が増えるといいなと思っています。

視聴率がすべてではないという方向に業界も変わっていますしね。世の中にあふれるエンタメを思う存分楽しんでほしいです。その一方で経済状況や環境によって、視聴環境がない、ちまたにあふれるエンタメを楽しむ余裕のない方がいる事実からも目をそらしたくないです。

安易に「ドラマを見てください」とは言えないなと思っていますし、そういう状態の中で、私のドラマを選んでくれた人を失望させてはいけないという責任を感じます。

余裕がある人、ない人すべての方の人生において、ちょっとした息抜きというか、希望を与えられるドラマを作っていければ幸せだなと。そして最終的には、「この人のドラマおもしろいから見よう」と望んで見てもらえる作品になればうれしいですね。


  エンターテインメントとしてドラマを楽しむうえで、作る側だけではなく、見る側に求められるものもありますか?

教育や環境などの格差も影響していると思うのですが、エンターテインメントを楽しむ文化・芸術が、だんだん世の中において不要なものとされている気がするんです。そんなことは絶対ないのに。ドラマに限ったことではなく、アニメでも映画でも、楽しむ喜びを味わえる環境づくりや教育が必要だと思います。

コロナ禍でなかなか難しいですが、地方自治体で無料の映画館を提供したり、学校の授業でエンターテインメントの魅力を伝えたり。そういう開かれたものを提供していくことで、文化としてのエンターテインメントの発展につながっていくと思います。でも、私自身もまだまだ行動に移せていないので、しっかり考えて実行していきたいです。


  今後、ドラマ界を盛り上げていくために、どのような形で貢献していきたいと考えていますか?

まず、マジョリティーだけがすべての世界という表現のドラマは描きたくないと思っています。ただ、マイノリティーでも状況によっては主役ではなく、脇役としてちょっとしか出てこない可能性はあるけど、いない存在にしたくない。私の取り組みが鼻につく人もいるかもしれませんが、そこは気にせずドラマを作り続けていこうと思っています。

あとは、ドラマを視聴する方たちにも自由がありますので、見たいドラマ、描いてほしいドラマをぜひ声を挙げてください。「がっつり恋愛ものを見たい」とか、「差別的な作品は見たくない」とか何でもいいので、どんどん発信してほしいです。
私個人としては「恋せぬふたり2」を書きたいと思っているので、NHKさん、オファーをお待ちしております(笑)。

吉田恵里香 (よしだ・えりか)
1987年生まれ、神奈川県出身。脚本家・小説家として活躍。主な執筆作品は、ドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season」(TBS系)「Heaven?~ご苦楽レストラン」(TBS系)、映画『ヒロイン失格』、『センセイ君主』など。「恋せぬふたり」が第40回向田邦子賞を受賞。