特集ドラマ「幸運なひと」
[前編]4月4日(火) 総合/BS4K 午後10:00~10:45
[後編]4月11日(火) 総合/BS4K 午後10:00~10:45
■ドラマ制作舞台裏ドキュメンタリー
4月14日(金) 総合 午前0:35~1:05 ※13日(木)深夜
★放送後1週間、NHKプラスで見逃し配信★
3月6日にBSプレミアムで放送された特集ドラマ「幸運なひと」。さまざまなことを先延ばしにしてきた夫婦が、夫のがんをきっかけに関係を再構築していく姿を描いた。放送終了後多くの反響を受け、新たに編集を加えた物語を、地上波(NHK総合)で2週連続放送する。今回、がんになった松本拓哉(生田斗真)の妻・咲良を演じる多部未華子さんに、演じる夫婦の魅力やドラマの見どころを聞きました。
――ドラマの脚本を読んで、そして実際に演じられていかがでしたか。
多部 がんというと、どうしても暗い、悲しいイメージがあったのですが、今作は、がんになった後も前向きに生きる夫婦の「日常」を描いています。そして、がんをきっかけに、夫婦間であいまいにしていたことを、本音を言いあいながら明るい未来への道筋をつくりあげていきます。ネガティブにならず、前向きに物事を捉えようとする拓哉と咲良の姿勢はすてきだなと感じました。
ただ、がんになった夫を支える妻として、どのように演じたらリアリティを感じていただけるのか、1シーン1シーン考えることが多かったです。この表現でいいのか…と毎日悩みながらも、咲良を精一杯演じました。
――拓哉と咲良、二人の関係性をどのように捉えながら、演じられましたか。
多部 拓哉はずっと明るいんです。弱音もほとんど吐かない、どちらかというと珍しいタイプの人だと思います。そんな拓哉に対して、咲良ははっきり意見を言うことがなかなかできなかったのですが、がんをきっかけに、正直な思いをぶつけられるように。今作では、人生でこんなに使ったことないと感じるくらい、「エゴ」という言葉をたくさん発します。お互いにエゴを言いあい、受け入れあう関係ってすてきですよね。そういった人と人生を歩めることって幸せなことだと強く感じました。
生田斗真さんとは、今作で二度目の共演になります。とてもフラットな方で、「普通」の延長線上で接していただいて。なので、何も気負うことなく演じることができ、ありがたかったです。また、がんになった役だからといって暗くなられることはなくて。私も作品の雰囲気に影響されることがあまりない方なので、波長があう感じもあり、毎日楽しく撮影させていただきましたし、拓哉と咲良、2人きりでの大事な場面もたくさんあり、刺激も多く受けました。
――撮影前に、がん患者のご家族の方とお話しされたとお聞きしました。
多部 はい。今回お話しさせていただいた、旦那さんががんになった方は、とても明るく力強い人で、笑顔が特に印象的でした。本当にすてきな笑顔で、ずっとお話してくださって。でもその笑顔の裏には、計り知れない悲しみや苦労、葛藤があったのだと思います。いろんなことを乗り越えたさきの笑顔だったのかなと。私にとって、とても大事な時間となりました。
そしてドラマ内でも、実際のがんの当事者の方々が集まって話をする場面があります。「幸せ」に関する話をポジティブに語っているのが印象的で。がんをきっかけに、日々の過ごし方や人との関わり方などが大きく変化するけれど、マイナスなことだけでなく、より良い方向へ変えている方がたくさんいらっしゃることを強く感じたシーンです。
――ドラマのタイトル「幸運なひと」についての印象をお教えください。
多部 実は、当初は違うタイトル名だったので、「幸運なひと」になったと聞いたときは、挑戦的なタイトルにしたなと、正直思いました。見る人によって受け取り方は違うと思いますが、私は、拓哉と咲良は幸運なひとだと思っています。
――演出の一木さんはじめ、スタッフの皆さんと作品を作りあげてこられていかがでしたか。
多部 そうですね。一木さんはとにかく熱い女性で、撮影に入る前からたくさんお話をさせていただきました。私は思いを言葉にするのが苦手で…ちゃんとコミュニケーションを取れていたかは不安ですが、撮影現場でもいろいろお話をして、一木さんの咲良に対する思いを100%体現できたらという思いも持ちながら、毎日演じていました。
――最後に、視聴者にメッセージをお願いします。
多部 明日は何が起こるかわからないというのは身にしみて感じていますし、今回のドラマをきっかけに、自分の子どもにも何を残せるのか、これから何を大事にして生きていくべきかなど、私自身が考えるきっかけになりました。
がんになったからといって、目の前の日常が変わることはありません。このドラマは、その日常を明るく生きる夫婦の物語です。ぜひ多くの人に見ていただけたらうれしいです。
1989年1月25日生まれ、東京都出身。2002年に俳優デビュー。NHKでは、連続テレビ小説「つばさ」でヒロインを務めたほか、「ツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語〜」、「これは経費で落ちません!」などに出演。
ドラマの演出を務めた、一木正恵さんにもお話を聞きました!
一木 当初は「さよならマネージャー」というタイトルでした。咲良の成長物語でもある今作は、咲良が自分の夢をつかむかどうかの分かれ道が途中訪れます。がんになった拓哉のマネージャーになるのではなく、自分で稼げる人間になることが、家族を救うことができる――。そんな意味合いを込めて、「さよならマネージャー」としていましたが、脚本の吉澤智子さんと話をするなかで「がんを幸運だなんて不謹慎ではという意見もあるかもしれないが、拓哉は自分のことを幸運だと言い続けてきた。このドラマは、自分のことを『幸運なひと』だと叫んでいる人たちの物語では」と感じ、このようにタイトルを変更しました。
多部さんが見せてくれる演技には、想像していた以上のものが飛び込んできます。特に印象的だったのは、拓哉が初めて涙を見せる場面。冷静な感じよりも、拓哉に寄り添う咲良を見てみたいと思っていたら、そのように変化していって。演技に関してのキャッチボールをたくさん行った、濃密な時間を過ごさせていただきました。