国民的漫画家、藤子・F・不二雄が描いたSF短編漫画を実写ドラマ化! 「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」『昨日のおれは今日の敵』で主人公を務めるのが、作品の大ファンでもある塚地武雅だ。今作に出演しての思いや、藤子・F・不二雄作品の魅力、ドラマの見どころについて話を聞いた。
【放送予定】
「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」
『昨日のおれは今日の敵』『親子とりかえばや』『流血鬼 前後編』
6月9日(金)総合 よる11:45~0:45 15分×4話連続放送
『イヤなイヤなイヤな奴 前後編』
6月11日(日)BSプレミアム/BS4K よる10:50~11:20
【ドラマのあらすじ】
『昨日のおれは今日の敵』
とある漫画家(塚地武雅)の仕事場。たった一人の助手(アベラヒデノブ)も彼の無計画ぶりに愛想を尽かし辞めてしまった。締め切り間近で原稿は全くの白紙状態。1時間だけ!と思って寝たところ朝になってしまい、編集者(高橋努)が訪ねてきてピンチに。自分の愚かさに嫌気がさした漫画家がある行動に出ると……。
――出演のオファーを受けたときの気持ちはいかがでしたか?
実は小さいころ漫画家になりたくて、藤子・F・不二雄先生の作品を古本屋で探すことが日課でした。「ドラえもん」はもちろん、「バケルくん」「モジャ公」「ドビンソン漂流記」「エスパー魔美」などたくさん読みましたね。先生に年賀状を送ったこともあります。ですから、今回のドラマに参加できて本当にうれしいです。
――「藤子・F・不二雄SF短編集」で印象に残っている作品はありますか?
「ドラえもん」をはじめポップな作品を多く手がけてきた先生が、刺激的でシュールなSF短編を描いたことは、当時とてもセンセーショナルでした。なかでも印象に残っている作品は、「ミノタウロスの皿」。牛に酷似した種族が、人間に酷似した種族を家畜とした世界を描いていて、アッと驚きましたね。物語のラストもいろいろと考えさせられる内容で。40年以上前の作品ですが、まったく色あせていないんです。今を生きる私たちにも伝わるものがある、深い内容の作品ばかりですよね。
また、ドラマの関連番組「藤子・F・不二雄SFワールド探検」で、「藤子・F・不二雄ミュージアム」に足を運びました。その展示で驚いたのは、修正ペンでたくさん描き直しをされていたこと。ミュージアムの方に話を聞くと、掲載雑誌と単行本とではセリフや構図を変えていたことも多々あったらしいんです。感覚で描かれる天才の人だとこれまで勝手に思っていましたが、ストイックに漫画と向き合われていた事実を知り、先生のことがさらに好きになりました。
――「昨日のおれは今日の敵」を読まれての感想を教えてください。
僕が演じる漫画家は、締め切りに追われても原稿に手がつかず、しまいには寝てしまうという意志の弱い人物。僕も、お笑い番組の本番前々日くらいにネタを書き始めるという経験を何度もしていたので、自分のことを先生が描いているのでは、と思うくらいとても共感しました(笑)。
今作は、「藤子・F・不二雄SF短編集」の中でもポップな話です。もちろん「すこし・ふしぎ」な物語なんですが、暗い話ではありませんし、主人公に共感もできる。普通の人が主人公っていうのもいいですよね。個人的には、物語の終わり方が大好きなんです。締め切りに追われる先生の当時の思いが、この作品に詰まっているような気がしますね。
――演じる上で意識されたことはありますか?
撮影に入るにあたって、原作のビジュアルにとにかく似せたいと思いました。漫画からそのまま出てきたキャラクターのように見せたいなと。というのも、「実写化作品のなかで、いちばん原作に似せられることができるぞ!」という自信があったんです。フォルムはこのまま活かすことができますので(笑)。ひげも、原作通りの無精ひげのように伸ばしました。自分でも納得のいくビジュアルができたと思います。
演じるうえでも、原作を忠実に再現することを心がけました。先生のファンですから、やっぱり原作通り動きたいですし、“漫画を動かしている”ようなドラマになったらいいなと。「塚地、原作に動きをあわせているな」と気づいてもらえたら、うれしいですね。また、「~かしら」など、先生の独特なセリフ口調もほとんど変えていません。先生の世界観を存分に楽しんでもらいたいという思いで演じました。
――印象に残っているシーンはありますか?
主人公が時空を超えるシーンがあるのですが、そのときのゆがんだ表情は、張ったラップを顔でひきちぎったときの表情なんです(笑)。タイムスリップを表現しているんだけれど、撮影はアナログで手作り感満載だったので、なんだか楽しかったですね。
――最後にメッセージをお願いします!
原作をご存じの方はもちろん、今回初めて先生の作品に触れる方も、誰でも楽しめる作品になっています。このドラマから先生の他の作品にもたくさん触れてもらいたいですね。面白い作品だと自信を持っていえるので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです!
1971年11月25日生まれ、大阪府出身。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「まれ」「おちょやん」、大河ドラマ「平清盛」「西郷どん」など。