新・介護百人一首

帰りたいが
妻も持病が
ありますと
施設に入った
強い父逝く

埼玉県松尾 理佳 61歳)

詞書

老いた父が老いた母を気づかって、入院後の行先を家でなく特養にしました。そのまま今年二月肺炎で亡くなってしまった父のことを詠みました。

感想コメントをいただきました

鎌田實

優しいお父さんですね。
お父さんはきっと家に帰りたかった。それでも弱い妻のことを心配し、共倒れにならない道を、お父さんは選んだのでしょう。自分を律することのできる方だったのだと思います。そんなお父さんの気持ちをちゃんと悟っているご家族もまた優しいと思いました。
優しくて、温かくて、強い、お父さんに献杯。

鎌田實

1948年生まれ。医師・作家。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり赤字病院を再生。地域包括ケアの先駆けを作った。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET顧問、地域包括ケア研究所所長、風に立つライオン基金評議員(他)。武見記念賞受賞。