新・介護百人一首

「お母ちゃんが
毎晩いるの」
と老母いう
窓に映った
自分を見つつ

大阪府西村 真千子 58歳)

愛知県 辻想蒼

詞書

実母が骨折のため入院し、認知症が進行してしまいました。コロナ禍でお見舞いに行けず、電話をしたら、「毎晩自分の母親に似た人がこっちを見ていて怖い」と言う。幽霊かとも思いましたが、母自身が映った姿なのではないかと思いました。

感想コメントをいただきました

市毛良枝

年々親に似てきます。鏡を見ると親が生きて帰ってきたかと焦ることもあります。高齢になると、認知症のあるなしに関わらず、老若の区別もつきにくくなるように見受けられます。でも、この歌のお母様は、お母ちゃんの姿が見えて安心しているのかもしれません。認知症になってわからないことを悲しいと勝手に思ってはいけないような気がして、このお母様の心のうちをのぞいてみたくなりました。

市毛良枝

静岡県生まれ、俳優。文学座附属演劇研究所、俳優小劇場養成所を経て、1971年ドラマ「冬の華」でデビュー以後、映画・テレビ・舞台と幅広く活躍。現在は、母の介護の経験を通じ、執筆活動や講演も行っている。趣味の登山をいかし、特定非営利活動法人 日本トレッキング協会理事、環境カウンセラーの資格を持つ。「73歳、ひとり楽しむ山歩き」(2024年2月発行 KADOKAWA)が好評発売中。