新・介護百人一首

手は自由
こころも自由
足だけは
自由にならず
車椅子

長野県毛涯 潤 85歳)

愛知県 ペンネーム タバコくれ太郎
愛知県 向井彩乃

詞書

倒れて七年忘れないことは、この左足が言うこと聞いてくれたなら… でもかなわない… 車椅子を卒業することが出来たら… 出来ない… でも手や口が動くから… そしてこころも…

感想コメントをいただきました

茂木健一郎

自由は人間にとって大切なものですが、同時に、それが失われ、制約されることの中に人生の営みがあります。「手は自由」だし、「こころも自由」だけれども、「足だけは自由にならず」と言葉を連ねることで、今置かれている状況が読者に伝わってきます。そして、「車椅子漕ぐ」という表現に託された思い、志。生きるということは、その時々の限界の中で、それでも前に進むこと。そんな人生の普遍的なことわりが伝わってくるように感じました。

茂木健一郎

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。