主人公の米田結(橋本環奈)が管理栄養士となり、大阪新淀川記念病院で働き始めて4年。そんな結を時にあたたかく、時に厳しく見守るのが、栄養科長の塚本文香です。

医師、看護師、薬剤師、管理栄養士が中心となって患者への適切な栄養管理を支援するNST(ニュートリション・サポート・チーム)を率いる塚本は、結を自分の後任としてNSTに参加させることにします。科長として人を上手にまとめる塚本ですが、なにかというと戦国武将を例え話に出すなど、歴史好きでおちゃめな一面も。

そんな塚本を演じるのは、濱田マリさん。上司として結を見守る塚本の思いや、管理栄養士を演じて変わったことなどを聞きました。


塚本さんはガミガミ言わないけど、たぶん誰も逆らえないんだろうなって(笑)

――今週から“管理栄養士編”がスタートしました。これまでとはまた違った物語になりそうですが、濱田さんが演じる塚本はどんな人物なのでしょうか。

塚本は栄養科の科長ということで、結ちゃんの上司だし、しっかりしなきゃいけないぞって思いましたね。脚本を読むと、仕事に対してすごく熱量があるんだけど、いろいろな経験を重ねたことで、一周まわって今は落ち着いた穏やかな人なんじゃないかなと感じています。すぐに武将の名前を出すとか、ちょっとクセもありますけど(笑)。

結ちゃんを見守りつつ、ビシッと指導する時もあるし、なおかつNSTを率いる人だから、最初は「どうやって科長らしく大きく見せようかしら?」っていう邪念のような迷いがありました。でも、NSTの皆さんとお芝居をすることで、スポっとハマる塚本さんの居場所を見つけることができたので、とってもありがたいです。

――これまで管理栄養士という職業についてどんなイメージをお持ちでしたか?

テレビで、アスリートの栄養管理をしている管理栄養士さんのお仕事を見たことがあったんです。食べることで体も心も強くするというか、栄養のために我慢して食べるのではなくて、彩りもよく、食べる人の側に立って作っていらっしゃるんだと知りました。

あと、子どもの頃、親戚に栄養士さんがいたんです。親戚一同の食事を作ることになったときに、その女性が「じゃあ、私が作ります」って手を挙げてくれて、そのご飯がむちゃくちゃ美味おいしかったんですよ。「なんで、こんなんできんの?」って聞いたら、さらっと「勉強したからね」って言って、栄養士さんってかっこいいなと思いました。

――NSTメンバーとの撮影はいかがですか?

初めてNSTに参加した結ちゃんが、心の中で私たちを「戦隊ヒーローみたい」って言うんですよね。脚本を読んだ時には、そんな感じなのかなと思っただけでしたが、実際に撮影してみると、私たちは同じ制服ですが、所属する科が違うため、それぞれ違う色の制服を着ているんです。

確かに戦隊ヒーローみたいで、この衣装を身につけるだけで仲間なんだって思えて結束力が高まるし、気が引き締まります。それに個性的で魅力的なメンバーが集まっているので、NSTって素晴すばらしいなと思いました。しかも、そのメンバーを選んだのは塚本ですから、「塚本、仕事できるわー」って(笑)。

――NSTのメンバーはそれぞれ個性が立っていますが、そんなメンバーの中で、塚本さんの魅力はどんなところにあるのでしょうか。

塚本はあんまりガミガミ言わないし、大きい声を出したりもしないんですけど、たぶん誰も私には逆らえないんだろうなって(笑)。「私の言うこと聞いてくれるよね?」っていう、穏やかだからこそ感じるいい意味での圧みたいなものがみんなに届くといいなと思っています。

――歴史好きというキャラクターもいい味が出ていますよね。

そうですね。自信を失くした結ちゃんに対して、塚本の厳しい部分がちょっとだけ出るシーンもあるのですが、そのシーンの終わりでも塚本らしさが出るんです(笑)。最後に戦国武将に例えて終わるから、厳しいことを言ってもちょっと柔らかくなる、スムーズに通常運転に戻れるというのが塚本のすごいところですね。


結ちゃんの魅力は圧倒的なコミュニケーション能力! 安心して後を任せられます

――塚本は自分の後任として結をNSTに参加させますが、結のどんなところを評価していると思いますか?

もう圧倒的にコミュニケーション能力です。患者さんも人ですから、スッと人の懐に入っていける結ちゃんは絶対にNSTに必要だし、安心して任せられると思ったんじゃないでしょうか。もちろん、今の結ちゃんは管理栄養士として未熟で、知識も足りない部分はあるし、もっと経験を積んで欲しいし、その過程で大変な思いをするかもしれませんが、必要なことだと感じています。

でも、この人なら絶対に乗り越えられるって信じているんですよね。結ちゃんは、自分のおじいちゃんくらいの年齢の方とも「全部食べられたやん!」ってハイタッチしちゃいますから。そういうことも管理栄養士さんにとってすごく大事なことなんじゃないかしら。

――そんな結を演じる橋本環奈さんにはどんな印象をお持ちですか?

初めて共演させていただいたのですが、橋本さんは人間のスケールが“でっけーな”って思っています(笑)。人間って富士山を見たときに、筆舌に尽くしがたい何かすごいものを感じますよね、それと同じような感覚で。

――富士山に例えられる人間性ってすごいです!(笑)

絶景と同じ! 橋本さんは、私たち共演者がお芝居をする上で気になっているポイントを全部感じとって、率先してスタッフさんに伝えてくれています。だから、私たちはすごく気持ちよくお芝居ができる。橋本さん自身もコミュニケーション能力が半端ないから、いろんな方向に気を配っていけるのかな。

実は私って気を使いすぎるタイプで、朝ドラのヒロインには並々ならぬリスペクトがあるので、いつもは近寄りがたく感じてしまいますが、橋本さんはそうでもなくて(笑)。それは、橋本さんが気を使わなくていい空気を出してくれているんだと思うんです。いちいち言わないけど、橋本環奈さんのこと好きで好きで仕方しかたがないです!


管理栄養士さんは食べることで心も体も強くするかっこいい仕事です

――「おむすび」の放送が始まった頃は、いち視聴者としてドラマを楽しんでいらしたと伺いました。

そうなんです。お話をいただいたのが、おむすびの放送を見始めて2週目ぐらいのときだったので、ゆくゆく結ちゃんの上司になると思ったら、すごく不思議な感じがしました。

――脚本を読んだ時、どういうところに魅力を感じましたか?

管理栄養士さんの役は知識も必要だし、大変なんじゃないかって思っていましたが、実際に根本(ノンジ)さんの脚本を読むと、すごくお芝居をイメージしやすいです。もちろん専門的なセリフは多いですが、その人のキャラクターが表れるようなセリフもたくさん書いてくださっているので、とても演じやすいなと感じています。

かわいい人、ちょっと難しそうな人、まんま大阪のオバハンっていう人もいるんだけど、それぞれがプロフェッショナルでかっこいい人ばかりなので、自分もそういう人間味を思いっきり出せるのがうれしいです。

――ドラマをきっかけに、濱田さんご自身が「食」について意識するようになったことはありますか?

食事の順番やバランスなど、「結ちゃんが目の前にいたら、何て言うだろう?」と考えながら食事するようになりました。サラダファーストにしようとか、30回ちゃんともうとか、毎食気にしながら食事をしています。

以前は、夜中にフレンチトーストをバクバク食べるような、すごくダメな食生活を送っていたんですけど、今は自然と我慢できるようになりました。おかげで、食に対する罪悪感がなくなりましたね。

――ドラマを見ている方たちにも、食を意識するきっかけになるといいですよね。

そうなると、病気を未然に防ぐこともできますしね。実は、塚本がNSTを立ち上げたことで、患者さんが早く退院できるようになったという背景があるんです。塚本、いい仕事しているんですよ(笑)。

私自身も管理栄養士さんのこまやかな栄養管理を知ったことで、病院の食事をしっかり味わってみたいなと思うようになりました。もし入院することがあっても、きっと病気をしているからつらいんだろうけど、楽しみな気持ちもあるというか、いつでも来い! という心構えができました(笑)。

【プロフィール】
はまだ・まり

1968年生まれ。兵庫県出身。1992年、バンド「モダンチョキチョキズ」のボーカルとしてメジャーデビュー。バンド活動を経て、俳優、タレントとして、映画やドラマで幅広く活躍する。NHKの出演作に、金曜ドラマ「ツレがうつになりまして。」、よる☆ドラ「書店員ミチルの身の上話」など。連続テレビ小説には「マッサン」「カーネーション」「カムカムエヴリバディ」に出演している。