星河電器で社会人野球選手として歩み出した四ツ木よつぎしょう。野球選手としての壁にぶつかっても、主人公・よねゆい(橋本環奈)と助け合いながら、それを乗り越えてきました。しかし、肩を痛めた翔也はすべてを懸けてきた野球を諦めることに。

そのことが原因で翔也は結に別れを告げますが、姉のあゆみ(仲里依紗)がさりげなく2人を糸島に行かせます。そんなサポートもあり、自分の気持ちを改めて確かめた翔也は結からのプロポーズを受け入れました。

そんな翔也を演じるのは、佐野勇斗さん。夢を絶たれた翔也への思いや、結からのプロポーズシーンの裏話について聞きました。


いつもと違う緊張感の中で撮影されたプロポーズシーン

――今日は、結からのプロポーズがありました。2人の恋を見守ってきた視聴者もグッときたのではないかと思います。

逆プロポーズのシーンは、緊張しましたね。僕はいつも大切なシーンの前は何もしゃべらないようにして、気持ちを作ってのぞむタイプなんです。一方で、(橋本)環奈は本当に器用だから、直前までおしゃべりしていても、カメラが回るとすぐに切り替えられるタイプ。

でも、そんな彼女がこのシーンの前は1人になって集中していたんです。そんな姿を見るのは初めてでしたし、リハーサルの段階から気持ちがあふれているのも初めて見ました。そんな環奈の姿に僕も刺激を受けて、いつもと違う空気感で撮影できました。

――結からのプロポーズというのも2人らしいですね。

この2人だからかわいらしくていいなとは思うんですけど、僕なら絶対に自分から言います! っていうか、なんなら結を1回止めます。ちょっと待って、自分から言わせてって。


夢がついえても、翔也の生き様が描かれていることが今作の魅力に

――今週は本当に盛りだくさんでした。特に、翔也が結に野球が出来なくなったことを告白するシーンは切なかったですが、佐野さんはその時の翔也の気持ちをどう捉えていましたか?

いつも僕はセリフを言う時に、その役柄の心情が自分の中にないか、いったん探すようにしているんです。自分の中に近い感情が見つかると、役柄の気持ちを想像しやすくなるので。

そうやって考えてみた時に、僕は「M!LK(佐野が所属するボーカルダンスユニット)でドームツアーをする」という目標のために、この10年ずっと頑張ってきて、何かの原因でそれが潰えた時の気持ちってどんなものだろうと思いながら演じていました。

やっぱり相当苦しいし、命を絶たれたような気持ちだと思うんです。自分にはもう何もないという絶望というか。

――翔也が野球に打ち込んできたことを一番知っているのが佐野さんだと思うのですが、その夢が絶たれるという展開については率直にどう感じましたか?

翔也からしたら絶望でしかないんですけど、作品としては、すごくリアルでいいなと思いました。ドラマや映画の世界では、登場人物が頑張って、もがいて、その結果、目標を達成するというストーリーが多いイメージですが、この作品ではそうは描かない。

だって現実でも、誰でも努力すれば、夢がかなうわけではないですから。ただ、成功は保証されていなくても、夢に向かって努力したことによって、必ず成長できるはずだから、その翔也の生き様みたいなものが描かれていることが作品の魅力なのかなと感じました。

――翔也としては仕方なかったのかなとは思うのですが、「別れてほしい」と告げたことで結は怒ってしまいます。

正直、僕は翔也と結、両方の気持ちがすごくよくわかるんです。「プロ野球選手になって活躍する」っていう夢がなくなって、何も残っていない自分よりも、別の人と一緒になった方が結は幸せになれるっていう翔也の言葉の意味もわかる。結からしたら、プロ野球選手になるから好きになったわけじゃないし、何もないところから一緒に頑張りたいんだよって思うのもわかる。2人の気持ちが理解できるから、もどかしく感じるシーンでした。

監督とも話したのですが、あの時の翔也って、精神的に余裕がなくて、まわりがまったく見えていない状態だったと思うんです。結の気持ちまで考えることができなくなってしまって、野球ができなくなった自分とは別れた方がいいって短絡的に考えちゃったんでしょうね。翔也がちょっとバグったというか、それくらい追い詰められていたんだと思います。


絶望を乗り越えた翔也の変化を演技から感じてもらえたら

――そして、そこから翔也の迷走が始まります。別人になりたいからギャルになるというところが、翔也らしい決断だと感じました。

ちょっとズレちゃってるんです(笑)。何も考えてないというか、むしろ翔也なりに考えた結果なんでしょうけど、本当に視野が狭すぎて……。ずっと一緒にいた結がギャルだから、ギャルになろうっていう。直球すぎるというか、直球がゆえの翔也の悪いところが出ちゃってますよね。

でも、その結果、歩さんに助けてもらえたんですけど。やっぱり歩さんの言葉がなかったら、翔也はあの状態から立ち直れていなかったし、結と結婚する未来もなかったんじゃないかな。歩さんの「大好きな人と、今、この瞬間を大切にして、思いっきり楽しんだら」っていう言葉が、その時の翔也にはすごく響いたんだと思います。

――高校球児から社会人野球選手になり、そこからの挫折があって、と、翔也にとって大きな変化が続きました。翔也を演じる上で意識したことはありますか?

これは朝ドラ特有のことだと思うのですが、1年くらいの撮影期間の中で、高校生から大人まで演じなければいけないということは、最初から意識していました。

同じ役で幅広い年代を演じることは初めての経験だったのですが、声色や話すスピード、表情などに気をつけています。年齢が上がっていくにつれて、少しずつ大人っぽく見せていきたいので、ヘアメークさんや衣装部さんの力も借りて、翔也を変化させているつもりです。

結との出会いのシーンでは、まだ子どもっぽくカッコつけちゃう部分があったりするのですが、そこは実は『となりのトトロ』でサツキに思いを寄せる勘太をイメージして演じていました(笑)。

――以前のインタビューでは、翔也は自分にすごく近いとおっしゃっていましたが、ここまで演じられて、翔也に対する思いに変化はありましたか?

翔也はずっとまっすぐで一貫している男なので、彼への思いは変わらないです。ただ、一つの目標に向かって一直線で走ってきた人が、それを絶たれてからの生き方はどう変わるのかというのはすごく考えました。そこを乗り越えたあとの翔也の演じ方というのは、言葉で表現するのはすごく難しいんですけど、少し違うのかな。これからの演技を見て、変化を感じてもらえたらうれしいです。

――結からのプロポーズを経て、これからの2人の物語の行方が気になるところです。橋本さんにメッセージはありますか?

環奈って自分を飾らないし、人に気を使わせないので、一緒にいるとすごく心地いいんです。裏ではきっとすごく努力をしているはずなのに、自分の弱いところを人に見せないんですよね。弱いところを見せちゃダメだと思っているのかもしれないんですけど、僕としては、たまにはそういうところを見せてくれよって思います(笑)。

だから、多少僕のことを頼ってくれてもいいんだよ、僕だって支えますよっていうのは伝えたいですね。

【プロフィール】
さの・はやと
1998年3月23日生まれ。愛知県出身。映画『ちはやふる−結び−』『小さな恋のうた』劇場版『 TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』、ドラマ「ドラゴン桜」「真犯人フラグ」「トリリオンゲーム」「マイダイアリー」など。NHKでは、夜ドラ「おとなりに銀河」で主演を務める。今作で連続テレビ小説初出演。俳優として活躍する一方、ボーカルダンスユニット「M!LK」としても活動している。