主人公・よねゆい(橋本環奈)の祖母である佳代は、故郷・糸島をこよなく愛す、超ポジティブ思考の持ち主。自由気ままな結の祖父・永吉(松平健)をはじめ、個性豊かな米田家の面々をいつも優しく見守っています。古くから伝わる先人たちの知恵にも明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもあります。

そんな佳代を演じるのは、3回目の朝ドラ出演となる宮崎美子さん。佳代というキャラクターの魅力や撮影をきっかけに感じた食の大切さについて聞きました。


個性的な米田家の中で、佳代さんは“塩むすび”みたいな人

――今日(11月11日放送)はお弁当作りを通じて、結が少しずつ「食」に興味を持ち始める様子が描かれました。佳代から結へ食の知識が受け継がれていくのはすてきなことだと感じましたが、結にとって佳代はどんな存在なのでしょうか。

糸島にやってきた頃は野菜も嫌いだった結が、食べることの大切さに出会う最初のきっかけになる人が佳代さんだと思うんです。そういう意味では、結にとってとても大事な存在なんじゃないかしら。

佳代さんは糸島でずっと生きてきて、作物を育てて、その作物で美味おいしい料理を作って、人も育てているっていう“育む人”なんだと思うんです。みんなのことを受け止めてあげる役だから、演じる時もそんなに主張しない方がいいかなと感じています。個性的な米田家の中で、“塩むすび”のようにいられたらいいかなと。派手な具はないけど、締めに一つ欲しい、みたいな(笑)。

――米田家のメンバーについて、どういう関係性だと思いますか?

うちは何と言っても、おじいちゃんの永吉さんがああですから(笑)。わがまま気ままにやりたいことをやっていく人なので、それを佳代さんが後ろから手綱を引っ張ってコントロールしつつ、息子夫婦を見守って。

でも、台本を読んだ時に、愛子(麻生久美子)さんとの距離がすごく近くて。なんならタメ口だから、あれ、愛子さんは実の娘だったっけ!?って勘違いしちゃったくらい(笑)。

――佳代と愛子は実の親子のようですよね。

そうなんですよ。すごくいい関係だなと思います。愛子さんはドーンと肝の据わった人だから、佳代さんも頼りにしているんでしょうね。

だから、おじいちゃんが突っ走り、息子(まさ/北村有起哉)がくよくよして、そんな男性たちを女性2人でうまく引っ張っているのが、米田家の家庭円満のけつじゃないかと思っています。


ギャルちゃんたちとの一緒のシーンが本当に楽しい!

――いつも優しい佳代が、永吉にはちょっと厳しいことも言ったりするのがほほましく見えます。永吉を演じる松平さんとの息もピッタリですね。

松平さんと夫婦役と初めて聞いた時は、これは面白いなって思ったんです。ただ、松平さんをはたいたりするから、見る人がどう思うかなってちょっと心配していたんですよ。でも、撮影前に松平さんが「バーンと音が出るくらいたたいて」って言ってくださったので、「わかりました」って(笑)。

松平さんはめちゃくちゃ優しいし、明るいし、頼りになるし、座っていらっしゃるだけで本当にいい空気を作ってくださるから、私たちも安心して甘えられていますね。

――宮崎さんが特に印象に残っているシーンはありますか?

私はね、ギャルちゃんたちを見ていると楽しくて(笑)。平成の頃も私は十分に大人でしたので、ギャルという存在は眺めていただけですけど、その只中ただなかにいた年代の人にとっては、すごくいい思い出みたいなんですよね。

長い靴下を履いたとか、メークをしたとか、当時の生き生きとしていた自分をいい思い出として持っていると聞きます。そういう思いでハギャレンの子たちを見ていると、なんだかのびのびとして楽しそうだなって。

一緒に撮影していてもすごく楽しいんですよ。これからの時代、自分を自由に表現できることって、年齢に関係なく、ますます大切になると思うんです。ドラマを見ている人も元気をもらえるんじゃないかって、そんな気がしています。


私が作ったキャベツがドラマに登場しました!

――タイトルが「おむすび」だけあって、おむすびを握るシーンも多いですよね。

おむすびが物語の大事なところで出てくるので、撮影が終わるまでに何個握ることになるのかなっていうのも楽しみです(笑)。昔はドラマの中でも、素手で握ったおむすびをみんなで食べるシーンがありましたけど、今はないじゃないですか。私自身もだんおむすびを握るとしたらラップを使っちゃうから、久しぶりに素手でおむすびを握るのがなんだかうれしくて。

やっぱり、これだよなって思いながら握っています(笑)。今は人が握ったおむすびに抵抗がある人もいると聞くので、おむすびを握る時にギュッとするのも3回くらいに収めようと心がけているんです。米田家のおむすびは、割と厚みがあって、まあるい感じの三角形って決まっているので、そこに3回でたどり着くのが目標です。

――米田家の食卓には、いつも糸島の食材やお料理がたくさん登場しますね。

実は、糸島の農家さんが野菜を送ってくださっているんです。市場に出せない曲がった野菜とかも入っているんだけど、それがまた美味しくて。あと、糸島の農家さんからキャベツの苗をいただいたので、それを自分の家庭菜園に植えたら、まあ立派なキャベツに育ったので、現場に持っていったことがありました。

そうしたら、そのキャベツを料理指導の広里(貴子)先生が料理してシーンに出してくださったんです。より一層、作品に参加している感じでうれしかったですね。皆さんも「甘くてシャキシャキして美味しい」と言ってくださって。生産者の私としては、人が美味しいって言って食べてくれるのが一番うれしいんだなって、しみじみ感じられました。

――「おむすび」は「食」が大きなテーマですが、ご自身も食について考えることはありますか?

そうですね、撮影していると、すごい勉強になります。やっぱり食材を無駄にはできないと思うんですけど、ドラマの料理チームがそれをちゃんと実践してくださっていて。大きく映るわけではないのに、米田家の食卓の中で、野菜の切れ端を福神漬けにして、それを刻んでマヨネーズと和えてタルタルソースにしていたり、ブロッコリーの芯をぬか漬けにしていたり。

それが本当に美味しくて。そういうふうに育てたものを無駄にせず、大事にいただいて、すべての恵みが回っていくのを、ドラマを作りながら実感しています。

――これから結にも新たな展開がありそうですが、宮崎さんとしてはどんなところに注目してほしいですか?

結ちゃんが食の大切さに気づいて、その道を進んでいくというベースは米田家の暮らしにあると思うので、私も佳代さんとして、そこを丁寧に描いていきたいですね。米田家のみんなの見守り役として、ちゃんと役目を果たせていたらいいなと思います。

このドラマは、それぞれが悩みながら自分らしく生きていく姿を描いています。誰しも自信を持てなくなる時があるけれど、その時は気づかなくても、待っていてくれる人や見ていてくれる人がいるんだよっていうことを伝えられたらと思っています。

【プロフィール】
みやざき・よしこ
1958年12月11日生まれ。熊本県出身。最近の出演作に、映画『ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春』『傲慢と善良』、ドラマ「さよならのつづき」「坂の上の赤い屋根」など。NHKでは、大河ドラマ「八重の桜」「いだてん〜東京オリムピック噺〜」、「カナカナ」「幸運なひと」などに出演。連続テレビ小説は「風のハルカ」「ごちそうさん」に続いて、3作目の出演となる。