新・介護百人一首

電話口
童謡歌う
我の目に
わきる涙
声をつまらせ

香川県岡本三陽子 65歳)

愛知県 野本果歩

詞書

コロナ禍制限で、電話で十分程施設入所中で失語症の母に声を掛けさせてもらっています。一方的な私の声より母の好きな歌を歌う方が…と歌いますが、いつも涙があふれて声がつまります。

感想コメントをいただきました

堀口茉純

電話口で童謡を歌うというという上の句から想像したほのぼのとした情景から一転。下の句を読み終えて立ち現れた情景の切なさに、思わず涙がこぼれました。電話越しでしか会えないという空間的な隔たりに大変なもどかしさを感じますが、このような温かな歌を詠まれる作者様のお気持ちは、お母さまにもきっと伝わっていると思います。コロナ禍という過酷な状況にあっても、決して切れることのない母子の絆を強く感じました。

堀口茉純

東京都足立区生まれ。幼少期より時代劇に親しむ。小学4年生の時、司馬遼太郎の本に出会い、沖田総司に初恋。中・高生の頃の成績は歴史のみ5。明治大学在学中に文学座付属演劇研究所で演技の勉強を始め、卒業後、女優として舞台やテレビドラマに多数出演。一方2008年に江戸文化歴史検定一級を最年少で取得すると、「江戸に詳しすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル?!)」として注目を集める。2011年には『TOKUGAWA15~徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本~』(草思社)で作家デビュー。また、YouTubeチャンネル『ほーりーとお江戸、いいね!』を開設し、歴史系ユーチューバーとしても活躍。歴史の面白さ、江戸の魅力、日本の伝統文化の素晴らしさを発信し続けている。レギュラー番組はNHKラジオ第一『DJ日本史』など。