大阪新淀川記念病院のベテラン看護師・桑原美和は、NST(ニュートリション・サポート・チーム)のメンバー。NSTを立ち上げた1人であり、病院内のベテランでもある桑原は冷静沈着で、まだまだ経験の浅い主人公の米田結(橋本環奈)をなにかとサポートします。一方で、無類のうわさ好きという一面もあり、病院内のあらゆる情報をつかんでいて、「病院の生き字引き」とも呼ばれています。
そんな桑原を演じるのは、朝ドラ初出演の妃海風さん。ドラマと舞台の違いや、桑原という役への思いなどを聞きました。
ドラマの現場は日々勉強。対応力や瞬発力が求められると知りました
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――妃海さんはこれまで舞台を中心に活動されていて、今回が初めてのドラマ出演と伺いました。初のドラマ出演で、朝ドラへの出演が決まった時はどんな心境でしたか?
本当にまず「うれしい」が第一声でした。お芝居をすることがすごく好きで、昨年はロンドンで舞台公演をさせていただいたこともあり、お芝居というものへの興味・関心がさらに増している時に出演が決まりました。朝ドラでお芝居の勉強ができることが本当にうれしかったです。
――実際にドラマの撮影現場に入られて、舞台とドラマの違いを感じますか?
全然違いますね。スタッフとキャスト、みんなで一緒に作り上げるのは同じなんですけど、ドラマはたった何十秒のシーンでも、ものすごく時間をかけて撮影するんです。舞台では一瞬で流れていくものが、カメラの画角を変えたり、お芝居を微調整したり、みんなでこだわって何度も繰り返し同じシーンを撮るので、瞬間瞬間を協力して作っているんだなと感じています。
――妃海さん自身も初めてドラマに参加して、演じる上で意識が変わった部分はありますか?
舞台は、お客様の空気感も意識するので、その日その日でお芝居が変わることもあるんです。ドラマの現場では、自分の中でしっかり組み立てた演技を相手にぶつけることができるんだなと感じています。でも、自分がやりたい芝居を用意した上で、現場では固めすぎずに力を抜いて、共演者の芝居に対応する力や瞬発力が一番必要なんだと実感していますね。日々、学ぶことが多すぎます(笑)。
――撮影に入る前にも放送をご覧になっていたと思うのですが、「おむすび」にはどのような印象をお持ちでしたか?
実は、私も平成元年生まれで、結ちゃんと同じ歳なんです。しかも、大阪出身なので、震災を近くに感じていて、幼い時だったから記憶がちょっと曖昧というところも似ているんですよ。
物語のテーマである「食」についても、35歳になって体の変化を感じて食生活の改善に取り組み始めた頃だったので、勉強になるなと思っていました。自分とリンクする部分がすごく多いので、結の気持ちに寄り添いながら見ていました。
役作りのため、「看護師あるある」を片っ端から調べました
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――ベテランの看護師を演じるために事前に準備されたことはありますか?
めちゃくちゃ勉強しました。看護師役だとお聞きし、片っ端からYouTubeで「看護師さんあるある」を調べました。看護師さんと患者さんの日常的なやりとりや、カンファレンス中のあるあるなど、専門用語というよりは、看護師さんの日常的な動きみたいなものをお芝居に取り入れたいなと思ったんです。
あとは、医療系ドラマをとにかくたくさん見ました。そのおかげか、今では現場に来る時、自分は看護師として出勤するんだ、今から患者さんのケアをするんだぞっていうくらいの感覚です(笑)。
――勉強した成果は生かされそうですか?
ベテランの看護師さんと新人さんでは立ち方や話し方が全然違うらしくて、ナースコールが鳴ってもベテランさんはバタバタしないし、微笑みを絶やさないと聞いて、なるほどなと思いました。だから、ふとした仕草にそういう違いを取り入れて、本物の看護師さんに「めっちゃリアル!」って思ってもらえたらうれしいですね。
セットも細部まで作り込まれているのに、看護師がリアルじゃないと残念じゃないですか。だからリアリティのあるエッセンスを取り入れていきたいです。
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――NSTのメンバーとの撮影はどんな雰囲気ですか?
結役の(橋本)環奈ちゃんとは舞台で共演していて、ドラマの現場でもみんなを引っ張ってくれる存在です。明るくて、やっぱりいると落ち着きますね。
他の共演者の方とは、ようやく皆さんの人となりがわかってきたような状況ですけど、最初はスタジオの前室で、みんな距離を空けて等間隔で座っていたのが、徐々に徐々に詰まってくるのが面白くて(笑)。
ドラマの現場は、なかなかプライベートなことまで話すような時間がないのですが、皆さんとお芝居をして、その中から「この人はこういう人かも」という興味を持って、前室で演技のことについて聞いています。お芝居をきっかけに距離が縮まる感じが楽しいですね。「こういうふうに演じるということは、きっとこんな人なんじゃないかな?」みたいな。
――それは、役者さんならではの感覚ですね。そういう意味で、妃海さんが一番気になる演技をされる方はいますか?
松崎(瑛人)先生役の永野宗典さんですね。永野さんと一緒にお芝居していると、間とかタイミングがすごく面白いな、心地いいなと思うんです。
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それで、今度は映像でそのお芝居を拝見すると、「さっきの表情がこういうふうに映るんだ」と、演じた時に受けた感覚と全然違うんです。松崎先生が「僕?」っていうシーンがあったんですけど、映像になったら、実際に見た時よりもっと濃い表情に見えました。そういう映像作品ならではの表情の作り方や映り方があるということを、永野さんから学んでいます。
うわさが耳に入る人は、みんなが打ち明け話をしたくなっちゃう人なんです(笑)
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――桑原美和という女性については、どんなキャラクターだと捉えていますか?
台本を拝見して、すぐに「この人、私の友達にいるな」と思いました(笑)。看護師で、うわさ好きで、ベテランで……ってすぐにピンと来たんです。すごく桑原に似ている友達が思い浮かんだ時に、「この子の良さって何かな?」と考えてみたんです。そうしたら、彼女はコミュニケーション能力がすごく高い。
結局、うわさ話がたくさん耳に入る子って、まわりが打ち明け話をしたくなっちゃう人なんですよね。話を聞き出すのがうまくて、落ち着いた雰囲気だから、ついつい話したくなる。いい距離感を保ちつつ、いい具合に職場の情報を与えてくれて、でも秘密は守る、こういう人が職場の上司だったらいいですよね。
――「うわさ話が好き」とだけ聞くとマイナスなイメージもありますが、桑原を見ていると、そんなふうには感じないですよね。
そうなんです。私自身はそんなにうわさ話は好きじゃないので、その友達に「なんでうわさが好きなの?」と聞いてみたら、シンプルに「おもろいやん?」って(笑)。彼女はただただ人が好きで、人に興味があるんだなってわかったんです。
だから、桑原の魅力も人を好きなところなんじゃないかな。人が好きだから、患者さんとも上手にコミュニケーションが取れるんですよね。NSTという様々な立場の人がいる集団でも、桑原が1人いるだけできっと調和が取れるんだと思うんです。
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――今日の放送では、豹柄でド派手な桑原のファッションセンスも明らかになりました。「ザ・関西ファッション」と言われていましたね。
それもめっちゃ友達にいるんですよ(笑)。友達4人で集まったことがあったんですけど、そのうち2人が豹柄で。だから、全然あり得るんです。私も衣装を着させてもらった時に、豹柄が馴染んじゃうというか、「いるよね?」みたいな感じで、全然違和感も抵抗もなかったですね。いまだに大阪には豹柄文化が根付いているんだと思います。
――これから見ている方には、桑原のどういうところに注目してほしいですか?
桑原は意外と冷静で、場の空気を読むタイプ。だから、一緒にいると落ち着く人なんです。「おむすび」には本当に個性的なキャラクターがたくさんいるんですけど、桑原はベテラン看護師だし、いいところで場を和ますためのうわさ話を出したり、空気を常に読んでいる人。見ている方にも「桑原がいるから、結ちゃんも安心だよね」と思ってもらえるような存在になれたらいいなって思っています。
ひなみ・ふう
1989年4月12日生まれ。大阪府出身。2009年に宝塚歌劇団に入団、新人公演でヒロインを務めるなど、早くから注目を集める。2015年より、星組トップ娘役に就任。2016年11月に退団。以降は、舞台を中心に幅広く活動している。2022年より、舞台『千と千尋の神隠し』でリン/千尋の母親役を演じ、2024年にはロンドン公演にも参加。