平成という時代にフォーカスしたオリジナル脚本の「おむすび」。ギャルをテーマに取り上げた“新しい朝ドラ”と話題です。
第4週では、主人公の結がギャルメークでパラパラを踊りました。脚本家の根本ノンジさんが橋本環奈さんに期待したこと、根本さんが考えるギャルとは、そしてギャル文化の中で、あえて2004年からスタートした理由などを聞きました。
橋本さんのコメディエンヌとしてのポテンシャルの高さに感動
──「おむすび」の設定を考えた段階では、橋本環奈さんが主演とは決まっていなかったそうですが、実際に放送が始まり、橋本さん演じる結の姿をご覧になって、いかがでしたか?
まさにイメージ通りですね。米田結を、橋本さんが見事に演じてくださっています。元気な雰囲気だけでなく、さまざまな思いを抱えている表情、おいしそうに食べる姿が、もともと結にピッタリだなと思っていたのですが、一番すごいと思ったのはツッコミのうまさです。
1週目の本読みの段階から、トーンや間合いが完璧で、橋本さんのコメディエンヌとしてのポテンシャルの高さに感動しました。これなら、もっと笑いのシーンを入れても大丈夫だなと。ですから、結の面白いシーンやセリフは、今後もっと増やしていく予定です。
──個性豊かなギャルたちも魅力的です。根本さんにとって、ギャルとはどんなイメージだったのでしょうか?
最近では、“令和ギャルブーム”の影響もあって、ギャルは世間に受け入れられている存在ですが、平成のギャルたちは、いわゆる不良やヤンキーと一緒くたにされて、あまり良い印象を持っていなかった方もいらっしゃるかと思います。
かくいう僕も、少し怖いイメージを持っていました。当時の僕は、彼女たちに親しく接する機会もなかったですし、そのバックボーンなんて知る由もありませんでしたから。
ところが、大人になってから、「昔ギャルだった」という方々にお会いして話をする中で、印象が変わってきたんです。意外と普通の人たちだったんだな、いろいろな事情を抱えていたんだな、と。考えてみれば、勝手に偏見を持っていたのはこっちだったんですけどね(笑)。
一方で、自分の好きなことにまっすぐで、笑顔を絶やさずパワフルで、団結力が強い、という部分にひかれるようになりました。それで、「平成」──いまや「失われた30年」と呼ばれている時代を、厚底ブーツでさっそうと歩いていた彼女たちの物語を描くのは面白いんじゃないか、これまでにない、新しい朝ドラになるんじゃないかと思ったんです。
あえて2004年からスタートしたのには理由がある
──そう言いつつも、平成ギャルの全盛期は1990年頃〜2000年初頭と言われています。「おむすび」の物語が始まるのは、それから少し後の時代の2004年。あえて年代をずらした意図はなんだったのでしょうか?
確かに、2000年代後半からはド派手なギャル文化は下火になっていきます。ただ、流行が多少過ぎ去っても、自分の好きなものやオシャレを貫き続けているという姿の方が、より「ギャル」らしいし、かっこいいし、面白い。その“マインド”を強く打ち出すために、あえてこの時代から描くことにしたんです。
見た目のインパクトが強いギャルですが、重要なのは、むしろ心の方なんですよね。まさに「ギャルマインド」という言葉が示す通り、自分らしさを貫き、ポジティブに楽しむ姿勢がギャルには必須。だからこそ、彼女たちを見ていると明るく元気な気持ちになれるんです。
元ギャル雑誌専属モデルで、「伝説のパラパラギャル」と呼ばれたRumiさん(「おむすび」のギャル監修、ギャル言葉指導などを担当)に取材をさせていただく中で、そのことを強く実感しました。
物語の序盤では、ギャルに対して苦手意識を持っている結が、彼女たちとどう関わって、どう変わっていくのかが見どころです。そして、「ギャルマインド」を手に入れた結が、生きていく上での悩みや問題にどう立ち向かっていくのかにこだわって描いています。ぜひ注目していただけたらと思います。