主人公・米田結(橋本環奈)の8つ年上の姉である歩は、地元・福岡では“伝説のギャル”として知られる存在。東京に出たきり、なかなか連絡もよこさない歩を母・愛子(麻生久美子)は優しく見守っていますが、ギャルになることに反対していた父・聖人(北村有起哉)とは衝突してばかり。
ある日、突然、歩は東京から糸島に戻ってきます。なぜ戻ってきたのか、その理由は明らかにされず、周囲は歩の奔放な振る舞いに振り回されていきます。
そんな歩を演じるのは、ご自身もギャルだと語る仲里依紗さん。歩というキャラクターへの思いや、妹の結との関係性について聞きました。
歩はどんどん我が道を進んでいく人。1人で突き進むところは、私も似ているのかも
――初めて脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?
脚本を読む前は、“伝説のギャル”役だとしか聞いていなかったので、本当にこれは朝ドラなのかな?っていう疑問があったんです(笑)。でも、脚本を読み進めていくうちに、すごく朝ドラらしいというか、今、この時代を生きる皆さんに届けるべきメッセージがたくさん込められた作品だと思いました。
朝ドラは時代ものが多いイメージだったのですが、今回は平成を舞台にしていて、すごくチャレンジング。自分の“好き”を貫くことの大切さが伝わってきて、より若い世代に観てほしいなと思える脚本でした。
それに、「おむすび」というタイトル通り、美味しそうなご飯がたくさん出てくるんです。食べることや家族と食卓を囲むことの幸せが感じられて、食育という意味でもすごくいい作品だと思いました。
――歩は“伝説のギャル”と紹介されていますが、どういうところが伝説たる所以なのでしょうか。
撮影前は、私も「伝説のギャルってどういうことなんだろう」って謎が深まる一方だったんですけど、実際に歩を演じてみると、単に派手な見かけだけで伝説と言われているわけじゃないんですよね。
歩の人間性や影響力がギャルの中で語り継がれていって、結果として伝説になったんだろうなと。歩自身は決して伝説になるつもりはなかったと思うのですが、どんどんギャル仲間が増えていって、最終的には「博多ギャル連合(ハギャレン)」という団体になってしまったという(笑)。
――では、伝説のギャルではない、素顔の歩はどんなキャラクターだと思いますか?
その名前の通り、歩は“自分の道を歩んでいる人”だと感じています。“家族や人との繋がりを結んでいく”のが結ちゃんなら、それとは対照的に、歩はどんどん我が道を進んでいくっていう。そうやって1人で突き進んでいくところは、私も似ているのかなと思います。
でも実は、歩は過去の経験から心に深い傷を抱えていて、それを跳ね返すために明るく振る舞っているところもあるんです。明るくしていないと心が折れてしまいそうだったんでしょうね。そういう痛みに負けないように逆に明るくいる感覚って、すごく共感できます。
――実際に歩を演じてみて、キャラクターの捉え方には変化はありましたか?
基本的に、歩を演じる時はパワフルでテンションを高く保っていないといけないんですけど、ふとした時に歩の素や人間味が出るシーンがあるので、いろいろな表情の歩を演じられるのが楽しいですね。
本当の歩が出ているのは、やっぱり結と2人のシーン。いつもは自分勝手に振る舞ったり、にぎやかに過ごしていたりする歩ですが、本当はすごく家族のことを大事にしているから、家族、特に結やお母さんの前では本当の自分を出せているのかなと思います。お父さんやおじいちゃん(永吉/松平健)の前では、ふざけていることも多いんですけど(笑)。
歩は、結の道をちゃんと作ってあげたいなって考えている
――今の時点では、歩と結は決して仲のいい姉妹ではないようですが、歩にとって、結はどういう存在なのでしょうか。
妹ってやっぱり、両親との関係性とはまた違った、すごく大切な存在だと思います。自分が守ってあげないといけないというか。実生活では私も3姉妹の一番上なのですが、そういう気持ちは私も妹たちに対してすごく感じています。
結が家のために自分のやりたいことを犠牲にしていて、歩はそれが自分のせいだということはわかっているから、そんな結がすごく気がかりなんですよね。だから、結の道をちゃんと作ってあげたいなって考えていると思うんです。歩って本当は、いいお姉さんなんです。見た目が派手だし、あちこち飛び回ってるから、ちょっと伝わりづらいんですけど(笑)。
――逆に、結にとって歩はどんな存在なのでしょうか。
結と歩は性格的にも全然違うし、小さい頃は仲がよかったけれど、今の結は歩のことが本当に嫌なんでしょうね。ギャルになって家の中をひっかき回していたし、急にどこかに行ってしまうし。歩のせいで、結は苦しんできたんですけど、でもどこかで、自分を貫く歩のことをうらやましいと思う気持ちも絶対にあるんだろうなと。
だいたい、姉は姉で「妹っていいな」と思っているし、妹は妹で「お姉ちゃんばっかりずるい」とか思っているもので。だから、結は歩のことをうらやましくもあるし、ちょっと迷惑でもあるし、両方の気持ちを持っている相手なんじゃないかな。
――結を演じる橋本環奈さんとは今回が初共演だそうですが、姉妹を演じてみていかがですか?
環奈ちゃんは、本当に「おむすび」チームのリーダー的存在ですね。みんなをまとめてくれるのはもちろんなのですが、現場のスタッフさん一人ひとりに愛があるし、みんなからも愛されているし。あんなにかわいらしい雰囲気なのに、現場ではかっこいいって感じです。「行くよ!」って、現場のムードを盛り立ててくれて、頼れるんですよね。
環奈ちゃんを見ていると、やっぱり主人公はこういう人がやらなきゃダメだよねって感じます。あとは、撮影するシーンの(前後の)繋がりをすごく覚えていてくれるので、そういう意味でも頼りになります(笑)。
懐かしいアイテムが満載! 歩の部屋の雰囲気は実際の自分の部屋にすごく近いです
――ドラマは平成が舞台となっていて、物語の鍵となるアイテムとして、プリクラ帳やポケベルが登場します。仲さんが印象に残っているアイテムはありますか?
糸島の家にある歩の部屋に、ビーズカーテンがあったんです! 昔、私も自分の2段ベッドにビーズカーテンをブワーッと囲むようにつけていたので、すごく懐かしくて。浜崎あゆみさんのポスターも壁が見えなくなるくらい貼っていました。
だから、歩の部屋とは結構近い感じだったと思います。コンポとか、缶ペンもすごく懐かしくて(笑)。衣装にもローライズのジーンズとかがあるのですが、そういう攻めたアイテムって今はなかなかないですよね。
――仲さんは平成に青春を過ごしてきたと思うのですが、平成にはどんなイメージがありますか?
平成って、いろいろな流行が目に見えて盛り上がった時代だと思います。まだSNSが普及していなかったので、雑誌だったり、テレビだったり、限られた情報源の中でファッションを楽しんでいたから、爆発的に流行するものがあって。浜崎あゆみさんがショートカットにしたらショートカットにして、シッポみたいなファーのチャームをつけたら自分もつけて、みたいな(笑)。
そういうギャルのファッションが象徴していますけど、おしゃれに対して、みんながすごくエネルギーを持っていて、いい時代だったなと思います。全員が一斉に同じようなスタイルになっていましたけど、今は何事に対しても、ちょっと省エネというか、そんなにエネルギッシュに追求する雰囲気じゃないような気がして。
――確かに、ギャルのファッションはエネルギーがないとできないですよね。そういうエネルギーが溢れていたギャルを朝ドラで描くことについてはどう思いますか?
私は好きなことを貫いているし、今も自分のことはギャルだと思ってるんですけど、やっぱりギャルって見た目が派手だし、マイナスのイメージを持っている方が多いのかなと思うんです。歩やハギャレンのメンバーを通じて、ギャルって見た目によらず、こんなに一生懸命なんだよってことを知ってほしいですね。
――ドラマに登場するギャルたちは、みんな本当に一生懸命ですよね。
周りの人にどう思われても、自分が一番かわいいと思えるものを身につけて、それを貫くのがギャル。そういう自分の“好き”を追求し続ける力、一生懸命やること自体がすごくステキなことなんだとわかってもらえたらなと。
私は、そうやって誰の目も気にせず、自分のために突き進むことが今の時代にも必要なんじゃないかと思うんです。だから、このドラマで皆さんが「ギャル、かわいいね」ってポジティブな方向を向いてくれて、今からでもギャルデビューしてくれる人が増えたらうれしいですね。
なか・りいさ
1989年10月18日生まれ。長崎県出身。ドラマ・映画に出演するほか、ファッション誌でモデルとして活躍。2006年、劇場版アニメ『時をかける少女』でヒロインの声を務め、高い評価を受ける。NHKでは、ドラマ10「つるかめ助産院~南の島から~」、プレミアムドラマ「昨夜のカレー、明日のパン」など出演多数。ドラマ10「大奥」<五代将軍綱吉・右衛門佐編>で徳川綱吉を演じて話題に。連続テレビ小説「エール」では梶取恵役で出演。