NHK放送技術研究所(通称:技研)は日本で唯一の“放送・メディア技術専門”の研究所です。

日本でラジオ放送が開始した5年後、1930年から東京世田谷砧の地で研究を続けてきました。まさに「放送の歴史を作ってきた」ところです。そんな技研の研究成果を見ることができる「技研公開」、今年は5月30日~6月2日に行われます。
NHK財団も参加している「技研公開2024」の見どころをご紹介しましょう。

ヘッドマウントディスプレー(HMD)の視野を再現する円筒型のディスプレー
(HMDの視野の範囲や解像度についての研究から)※記事中に説明あり

「Future Vision 2030-2040」
~技研が描く2030-2040年に向けた放送メディアの未来ビジョン~

入ってすぐ、エントランスホールでは技研の研究ビジョンが紹介されています。
題して「Future Vision 2030-2040」。未来のネット環境やコンテンツ制作環境を想定して技研が目指す未来のビジョンと、それに必要な研究開発について展示しています。
デジタル技術の急速な発展によって、メディア環境は大きな変化を続けています。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスマートグラスなどの新たな視聴デバイス、仮想空間でのコミュニケーション、生成AIなどなど、すでに体験してみた、という方も多いでしょう。
この先の未来は一体どうなるのか?


イマーシブメディアで没入感を体験 

映像の中の世界への没入感を体験できるのが「イマーシブメディア」です。今年の技研公開では、最新のイマーシブメディア技術を体験できる展示が多くなっています。

ニュースを3次元空間に表示してみたら…… (右上はARグラスの機能を備えたヘッドマウントディスプレーを装着した様子)

▼ARグラス型ニュース提示システム
今年の技研公開で初登場の技術です。ARグラス越しに見えるユーザー周辺の空間にニュースを配置します。3次元にすることで、普通のネット画面と比べてより多くの情報を表示でき、一覧性が高くなります。新しいものを目につきやすい高さに、関連性の高いニュースを近くに配置できます。
もちろん、会場で実際にARグラスをつけて、体験できます。

▼ヘッドマウントディスプレーで全方位を眺める
360度(全方位)の映像を手軽に楽しむことができるヘッドマウントディスプレー(HMD)は、高解像化・高性能化が進んでいます。ここでは、HMDの視野の範囲や解像度についての研究を紹介しています。(上記※の画像参照)会場で映像を見ながら研究内容を聞いてみてください。


音でも没入感を体験!

このヘッドホンをつけたら、そこはほら、喫茶店の中!

▼イマーシブメディア用音響制作ツール
こちらは「音」で没入感を実現する技術です。自分があたかもその場所にいるような音の聞こえ方を再現できます。
会場で「喫茶店の中にいるような音の聞こえ方」を体験してください。


自由に変形できるディスプレー 

写真右下、膜のようにクニャっとしているのが“ディスプレー”

薄型テレビや曲げられるテレビなど、次世代のテレビの研究を続けてきた技研が次に目指しているのが、自由に変形できるテレビ=「ディフォーマブルディスプレー」です。柔軟なゴムに基盤で作るディスプレーなので、ドーム型の湾曲した形のテレビだって作れるし、服の一部として着られるテレビ、なんかも作れるかも!

着られるテレビができるかも?

この研究は去年の技研公開2023で初めて紹介されました。前回は単色の表示でしたが、今年はなんとフルカラー化。1年で達成です! 会場で、未来のテレビの材料を見て、将来どんなテレビが作れるか?想像してみてください!


次世代地上放送の伝送技術 

2018年、衛星放送で4K・8K放送が始まっています。次は地上波での放送を目指しています。
ここでは、4Kで受信をしているときに電波が弱くなってしまっても、放送を途切れさせることなく2Kに切り替えて受信できる技術や、例えば車で移動しながら放送を受信しているときに、トンネルの中など電波が弱いところでも音声だけは途切れにくくする技術、などを紹介しています。


NHK技術の活用と実用化開発 

テレビの解説音声をスマホで聞ける装置(左)と、8Kで、広い視野での撮影や医療分野にも応用できる、小型カメラ(右)

NHK財団では、技研が開発した最新のメディア技術を幅広い分野に活用するためのお手伝いをしています。技研公開では、「NHKが保有する特許・ノウハウの技術移転」ほか、実用化研究として「解説音声制作・配信システム」と「8K×8K正方アスペクト比カメラ」を紹介しています。


本当は、もっとご紹介したいのですが、長くなりますのであとは会場で!
未来を体験できるコーナーが盛りだくさん。土日にはファミリー向けのイベントも予定しています。

6月1日(土)2日(日)開催のファミリーイベント
●チコちゃんシャボン玉早割ゲーム   画面に出てくるシャボン玉をいくつ割れるかな?
●どーもくんデジタルマット      床に映し出されたどーもくんと遊ぼう!
●ラボちゃん工作体験         技研オリジナルの鉛筆スマホ立てを作ってみよう!
●8Kラボちゃんを探せ        画面の中に一人だけ違うラボちゃんがいるから探してね!
●8K災害の記憶デジタルミュージアム 江戸時代の災害資料を拡大して見てみよう!

テレビ、放送、ネット……私たちの生活にますます欠かせなくなっているメディアにまつわる技術が、これからどのようなシンカを見せるのか、是非、会場で体験&目撃してください!研究員の説明もあります。

(NHK財団 技術事業本部 冨山仁博)

技研公開2024 「技術でひらくメディアのシンカ」
開催期間: 5月30日(木)~6月2日(日) 
      午前10:00~午後5:00(終了30分前までにご入場ください)
会場: NHK放送技術研究所 (東京都世田谷区砧1-10-11)
入場: 自由(事前予約なしでどなたでもお越しいただけます)
※詳しくは NHKの公式サイトで→  技研公開2024「技術で拓く メディアのシンカ」 
記事の内容については NHK財団技術事業本部までどうぞ