連日宣伝させてもらっているが、
3月24日夜10時から、特集ドラマ『生理のおじさんとその娘』が放送となる。
この作品はタイトルの通り、生理にまつわるドラマだ。もっと正確にいえば、生理を通して描かれる家族や人間関係のドラマだ。
タイトルに生理というワードが入ること自体が珍しいのに、その次にやってくる「おじさん」という単語のミスマッチさに「うっ」ときてしまう人もいるのではないだろうか。
本作は、生理にまつわるドラマなのに、主演は心身ともに男性だ、おじさんだ。
生理と、おじさん。
本来交わることのないワード、交わってほしくない、拒絶感が半端ないワードだと思う。
でも、それは一体なぜなのか? なぜおじさん(というか男性)が生理について語ったり詳しかったりすると嫌なのか? その気持ちに目を向けた作品でもある。
男性に生理について触れて欲しいか、知識を得て欲しいか。
どう考えるかは、生理がやってくる人間によって千差万別だ。
その人が歩んできた家庭環境、人間関係、生理にまつわる思い出・トラウマによって変わる。いや、そもそも生理についての価値観、生理自体が千差万別で、はっきり言って正解はない。
「おじさんが生理について語る?あり得ない!!」とドラマ自体から目を背ける人もいるだろう。観ないままに批判する人もいるだろう。そういう考えを否定するつもりは一切ない(本当は騙されたと思って、一回ドラマを観て欲しいけど……)。
なぜそこまで生理の話題に嫌悪感を抱くのか、なぜドラマで生理を扱ってほしくないのか、きっとそれぞれ理由があると思う。けれど、その問題と無理に向き合う必要も私はないと思う。
だって私達は生理について自由に語ることも、情報をキチンと得ることも良しとされない世界を生きてきたから。メディアは生理について語れる世の中になったとはいうけれど、実際は全然そうでない世界も確かにあるから。生理に対してさまざまな選択肢があることを教えられてこなかったから。これは性別やセクシャリティー問わずのことだ。
生理は子供を妊娠する為に必要なものだけれど、妊娠を望んでいなくても必要不必要に関係なく、生理が来る人には生理が来る権利がある。そして生理を疎ましく思ったり、嫌ったり、うんざりする権利もある。そういったネガティブな気持ちを婦人科に行くことで緩和する権利がある。一時的に止める権利もある。
「え?生理を止める?それ、大丈夫なの?」と驚く人もいると思う。
「え?生理を止めることが駄目って思っている人がいるの!?」と驚く人もいると思う。
定期的な生理サイクルはもちろん健康のひとつの指標ではある。
でも、低用量ピルを服用したり、ミレーナなどを使用して生理を一時的に止めたり、コントロールしても体への悪影響はないといわれている。これらは、もちろん体質によって合う合わないがあるから、必ずお勧めするものじゃない。止めたくない人は止めなくていい。でもトライしたい人にはトライする権利がある。生理に関わらず、自分の身体について自由にする権利があるのだ。
さて色々長く書いてしまったが、今回グッときた言葉は、
生理のおじさんとその娘のサイトに発表された原田泰造さんの言葉だ。
そこで原田さんはこう語っている。
「生理のおじさんとその娘」、もちろんみんなに見てほしいんですが、男性にもぜひ見てほしいですね。生理について知ろうと思う心がちょっとでも芽生えてくれたらすごくうれしいです。
女性の中にも、多分「あんまりそういうの分かってほしくないんだよね」っていう人もいっぱいいると思うんです。だけど、このドラマを見て、これはちょっとでも分かってもらえた方がいいのかなって思ってもらえるとうれしい部分もいっぱいあります。
私はこのインタビューを読んだ時、本当に原田さんに本作の主人公を演じていただけて良かったなと思った。(是非インタビュー全文読んで頂きたい)。
原田さん自身、お母さまからは女性の生理について「男は知らなくていい」と言われて育ったそうだ。その原田さんがドラマの主人公・光橋幸男を演じ、作品を通じて、このようなお話をしてくれるのは、とても素敵だなと思った。
こういう気持ちが、生理をドラマで扱う意味なのかもしれない。
エンタメの力は微力だけれど、どうかこのドラマを通じて「男性どころか、誰にもおおっぴらに生理について語って欲しくない」と思っている方々が、そう思わないでいられる世の中になりますように。男女問わず、生理に対する理解が深まり、生理に関するさまざまな事柄で不快な思いをしたり傷ついたりする人が一人でも減りますように。
1987年生まれ、神奈川県出身。脚本家・小説家として活躍。主な執筆作品は、「DASADA」「声春っ!」(日本テレビ系)、「花のち晴れ~花男 Next Season」「Heaven?~ご苦楽レストラン」「君の花になる」(TBS系)、映画『ヒロイン失格』、『センセイ君主』など。NHK「恋せぬふたり」で第40回向田邦子賞を受賞。
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第1回:最近、私がグッときたのは、この言葉!
第2回:鉄道は飽きないよ。全然飽きない。もう 100%楽しい。ぶっちゃけ言っちゃえば、もう100%楽しい!
第3回:「気をつけて、だけど恐れずに」クローズアップ現代・沢木耕太郎氏の言葉より。
第4回:「恵里香ちゃん、仕事どう?楽しい?」愛する姪っ子の言葉。
第5回:「つまんない爪と耳になったな」ある人の言葉