脚本を担当した特集ドラマの解禁がありました。
「生理のおじさんとその娘」というタイトルです。
3月24日夜10時放送予定です。
また近くなりましたら、ここでもお話させてくださいませ。
【放送予定】3月24日(金)総合 午後10:00~11:13
出演:原田泰造、菊地凛子 ほか 語り:麻生久美子
さて、本題に戻ろう。
今回グッときたのは、もうすぐ小学校四年生になる姪っ子、Aちゃんに言われた言葉だ。
約9年前、生まれたてのAちゃんを抱っこしてから今現在まで、私は彼女の成長を割と近くで見てきた。独身時代も今も、私は基本的に実家で仕事をしているので、人より姪っ子と関わる時間が多い方だと思う。そのせいもあってか、私は姪っ子愛が重めである。
どのくらいの重さかというと【彼女が生まれたばかりの頃、恐らく一生Aちゃんと接触することがないだろう仕事相手の人々に彼女の写真を見せびらかして姪っ子自慢をしてしまう】くらいの重さである。古くから私と仕事をしている方々には今でもよく「姪っ子、何歳になった?」と聞かれたりする。
そんな叔母からの重めの愛を、今の所はAちゃんも良しとしてくれているようで私に懐いてくれている。おしゃれも外遊びもお絵描きもYouTubeも大好きな今時の子で、今、学校ではやっているものを教えてくれるし、会えばハグしてくれるし、「〇〇の絵を描いて」とLINEでおねだりしてきてくれる。
【絵が上手なおばちゃんポジ】を死守したい私は、見たこともない漫画やゲームのキャラクターを必死に検索して模写したりしている。思春期・反抗期がきて相手にしてくれなくなる日が怖いけど、そんなおませさんになったAちゃんも見たいなぁと思う今日この頃だ。
そんな関係のAちゃんなので、私は息子が生まれる前、ちょっと心配だった。
Aちゃんは吉田家の初孫だ。私の息子が生まれるまでの6年間、孫の座はAちゃん一人のものだった。兄夫婦やジジババから当然、一身に可愛がられて、私も当然彼女が可愛くて、彼女自身もそれが当然と思っている。そんな環境が私の息子の登場で変わってしまうのだ。
もちろん兄夫婦もジジババも私もAちゃんへの愛情は当然変わらないが、彼女だけを見るという時間は確実に減ってしまう。赤ん坊は手がかかるので関わる時間も減ってしまう。心穏やかでないはずである。
私は地球上の全ての子供達が「自分は愛されて当然だ」と思っていてほしいので、のびのびと育っているAちゃんを微笑ましく思っていた分、彼女が寂しい想いをしたり傷ついたりしないか、不安だったのである。
息子の誕生の直後に、彼女の妹も生まれ、Aちゃんのとりまく環境は確実に一変した。
実際寂しい想いも辛い想いも嫉妬もたくさんしただろう。それでも彼女はすばらしいことに息子と妹をかわいがり、たくさん世話をしてくれている。その日の気分で何時間も遊んでくれる時もあるし、一緒にいてもまったく相手をしてくれない時もある。そんな気持ちのムラも子供らしくて、とてもいい。
【ずっと近くで彼女を見ていた分、彼女の成長が誇らしく微笑ましいんだな】
そんな風に思っていたつい先日のこと、Aちゃんと息子が遊んでいる横で、私は仕事をしていた。(欲張りな私はいつも仕事をぱんぱんに入れてしまうので、自業自得だが365日大抵締め切りに追われている。なので隙あらば仕事をしようとしてしまう)。
締め切り間に合うかなぁ、急がなきゃ……なんて考えている私に、Aちゃんが突然話しかけてきて言ったのが【恵里香ちゃん、仕事どう?楽しい?】である。
周りの大人が言っている言葉をただ真似しただけかもしれない。深い意味がないかもしれない。それでも私はかなりグッときてしまった。
グッときたポイントは二つ。
一つ目は、あの小さかった姪っ子が、私の仕事の状況を気遣っていてくれたことに成長を感じたこと。
二つ目は私が彼女を見てきたのと同じように、彼女も私をずっと見てきたのだという事実にハッとさせられたことだ。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている的驚きだった。当たり前っちゃ当たり前なのだが、私は彼女に仕事のことを尋ねられるまで自分が見られているという意識が全くなかったのである。
動揺を隠しつつ「う、うん。大変だけどすごく楽しいよ」と答えると、彼女は「そっか」とまた息子と遊び始めて会話は終わった。
それまで私はAちゃんに好かれたいという気持ちはあったけれど、どう見られたいかという気持ちはほぼなかった。どう見られたいかと言われれば、そりゃ当然かっこいいと思われたい。仕事を頑張っているかっこいい大人、他の大人とは違うぜって思われたいに決まっている。
人の目を気にしすぎるのは良くないけれど、これからどんどん大きくなるAちゃんにプライベートでも仕事でも幻滅されたくない。そんな風に襟を正すことができた良い出来事だった。
ありがとうAちゃん、これからも仲良くお互いの成長を見つめ合っていこうね。
1987年生まれ、神奈川県出身。脚本家・小説家として活躍。主な執筆作品は、「DASADA」「声春っ!」(日本テレビ系)、「花のち晴れ~花男 Next Season」「Heaven?~ご苦楽レストラン」「君の花になる」(TBS系)、映画『ヒロイン失格』、『センセイ君主』など。NHK「恋せぬふたり」で第40回向田邦子賞を受賞。