NHKスペシャル「認知症バリアフリーサミット〜本人の声が まちを変える〜」
4月1日(土)総合 午後10:00~10:49


日本では、2025年には約700万人(65歳以上の約5人に1人)が認知症になると予測されている。当事者は自信を失い、家族も「何もできない」とあきらめてしまう……そんな“心のバリア”が症状を悪化させ、介護負担を増やすという負のスパイラルが大きな課題になっている。そんなバリアを取り除くために注目されているのが、“認知症バリアフリーなまちづくり”。

4月1日放送のNHKスペシャルでは、全国のまちづくりのトップランナーが、当事者や家族、行政関係者らと一緒に“認知症のバリア”をなくすためのアイデアを考えていく。

その関連イベントとして、「地域交流イベント『認知症』とともに生きるまちづくり」が3月4日に愛知県豊田市で開催された。
会場の福祉施設「スマイリング リハニティー」をキーステーションに、新潟市と京都市をネット中継で結び、計4つの取り組み【豊田市「おんぶにだっこ」、新潟市「marugo-to」、京都市「駅カフェ」、豊田市「スープタウン構想」】を紹介!会場の参加者とともに意見交換しながら、交流を深めた。

【京都市「駅カフェ」(画面左)】左から、「京都市 高齢サポート 岩倉」センター長・松本恵生さん、認知症当事者の鈴木貴美江さん、貴美江さんの娘・佑三古さん。
【新潟市「marugo-to」】左から、代表・岩﨑典子さん、参加者・矢部日出海さん。

司会は、イベントのコーディネーターも務める、福祉ジャーナリスト・町永俊雄。パネリストに、ことし1月に放送された NHK スペシャル「認知症の母と脳科学者の私」に出演された脳科学者・恩蔵絢子、デイサービスなどの福祉事業を運営する SMIRINGの代表で、ライフクリエーターの中根成寿が登壇。

左から、町永俊雄さん、恩蔵絢子さん、中根成寿さん。

会場には、当事者や地域の高校生、介護を学ぶ大学生、社会福祉協議会の職員など幅広く来場。今回、以下の4つの取り組みから「認知症と共に生きるまちづくり」について、共に考えを深めていった。


豊田市「おんぶにだっこ」

▼「おんぶにだっこ」の取り組み動画はこちら!▼
https://steranet.jp/articles/-/1662


新潟市「marugo-to」

▼「marugo-to」の取り組み動画はこちら!▼
https://steranet.jp/articles/-/1663


京都市「駅カフェ」

▼「駅カフェ」の取り組み動画はこちら!▼
https://steranet.jp/articles/-/1664


豊田市「スープタウン構想」

▼「スープタウン構想」の取り組み動画はこちら!▼
https://steranet.jp/articles/-/1665


共生の地域社会を創りあげるべく、活気あるまちづくりを行うそれぞれの取り組みに、パネリスト、参加者からも多くの意見が飛び交う。
認知症の母を持つ恩蔵は、率直な思いを語った。

恩蔵「高校生のとき、私は登校拒否をしていました。当時、自分が何者かにならなかったら、社会で受け入れてもらえないという恐怖を感じていたんです。そして、母が認知症になったときに、同じ問題にぶつかりました。母が何かできなくなったら、母は母ではなくなるんだろうかと。けれども、皆さんは能力ではなく、その人そのものを受け入れている。皆さんのような方に早く出会えればと思いましたし、一人で抱え込むのではなく、私や母の思いを素直に発信する大切さを今回教えていただきました」

自身も豊田市で共生社会のまちづくりを行う、ライフクリエーターの中根は、場を作る側の視点から、居場所が持つエネルギーについて語る。

中根「取り組みが失敗することは考えていません。もちろん、その場所に合う人もいれば、合わない人もいると思うが、その場所があることに救われている人は少なからずいますので、居場所作りの継続が大切だと考えています。
スープタウン構想の会議では、介護や福祉に興味がない方も多く参加していますが、参加する会を盛り上げたいといろいろと動いています。“自分ごと”になったときに、エネルギーを発してもらえるんですね。それが場のエネルギーにつながっていくんだと思います」

さらにイベント参加者からもさまざまな意見、思いが生まれた。

高校教員「どの事業所の方もパワーがあるなと感じました。地域活動に参加しないかと声をかけても、なかなか1歩を踏み出せない学生が多いんです。失敗することに怖がっていたり、変化することを恐れていたりするんだと思います。パワーを持っている大人がたくさんいることをもっと伝えたいと思います」

地域の高校生「自分が住んでいる街について、どこか他人事のように考えていることもあったので、今回のような場に積極的に参加して、自分のやりたいことなどを発信したいです」

社会福祉協議会 職員「場のエネルギーをとても感じました。やりたいことをとにかく楽しくやるのがいいことだなと。私たちも、支え合いの地域づくりを目指していますので、皆さんと協力してそういった場を一緒に作っていきたいです」

最後に、イベント参加者に、共生社会への思いやまちづくりの未来など、今回のイベントを通して感じたことを、自由に画用紙に書いてもらった。

「笑顔」「私らしさを地域で活かす」「みんなが楽しくわくわくする町をつくる」といった前向きな言葉や、「∞」に笑顔マークを追加したイラストで表現するなど、共生社会への思いをそれぞれに表現。
このように、自分の思いを自由に発言できる場所の存在が、ワクワクする社会への第一歩かもしれないと感じる場面でもあった。

最後に、町永はこのようにイベントを締めくくった。

町永「“超少子高齢社会”を不安がるのではなく、豊かに成熟し、ワクワクする社会に変えることができる——。今回紹介した取り組みから、そんなメッセージを受け取りました。私が画用紙に思いを描くなら、“まちづくりは自分づくり”と表現します」

イベント終了後、現地会場に参加していただいたSMIRINGの山口達也さんと加藤香苗枝さんからメッセージをいただいた。

=====山口達也さんからのメッセージ=====
今回、自分たちが意識していなかったことも皆さんに引き出していただき、取り組みの価値を再発見することができました。
脳科学者の恩蔵さんのコメントは、認知症介護を仕事とする私たちにとって、非常に貴重なものであり、新しい視点として学びになりました。また、高校生などの若い世代の皆さんもイベントに参加してくださり、それぞれの立場で意見や思いを聞かせてもらえたことは、まさにスープ会議のようで嬉しく思いました。認知症の方だけでなく、地域で暮らす一人ひとりが自分ごととして捉え、それぞれの役割を発揮してまちづくりに取り組むことこそが、本当のまちづくりだという確信を得ることができました。
地域の皆さんが「スープのさめない距離」で支え合い、あたたかい「スープなまち」が実現する未来を、ワクワクしながらつくっていきたいと思います。さらには、日本各地にスープなまちが広がり、超高齢社会の先進事例として、世界のモデルになることを目指していきたいと思います。このような可能性を感じることができたのは、今回のイベントのおかげです。ありがとうございました。

=====加藤香苗枝さんからのメッセージ=====
福祉関係者だけでなく高校生なども参加して、意見を言ってもらうことができ、会場全体に参加してる実感があってとても有意義でした。始まる前はとっても緊張してましたが、新潟「marugo-to」、京都「駅カフェ」の話を聞いてこんなにいろんなことを考えてる人が他の地域にもいたことが分かりました。これをきっかけに認知症だけでなくいろんな人に優しいまちがたくさん増えるといいなと思いました。また今回、「場所」ってとっても大事なんだなと感じました。そこが楽しい、好きなことがやれる、誰も否定しない、そこに行きたい、認めてくれるそんな場所を自然と作り出せる地域を目指したいなと思います。町永さん、恩蔵さん、こんな田舎まで来てくださりありがとうございました。
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まちづくりは一人一人が主人公となって、できあがっていくもの。そして、「認知症とともに生きるまちづくり」は、認知症だけに限定するものではなく、誰もが心地よい居場所づくりでもある。バリアフリー社会へのアイデアは、以下のNHKスペシャルでも放送される。この機会に、ぜひ共生社会について考えてみませんか。

NHKスペシャル「認知症バリアフリーサミット〜本人の声が まちを変える〜」
4月1日(土)総合 午後10:00~10:49