柚木理沙ことリサポンは、主人公・米田結(橋本環奈)のクラスメイト。学校にいる時は校則をきっちり守るおとなしい女子高生ですが、実は隠れギャルで、ハギャレン(博多ギャル連合)のメンバーでもあります。
ギャルの歴史を本にするという夢を持ち、真島瑠梨(ルーリー/みりちゃむ)、佐藤珠子(タマッチ/谷藤海咲)、田中鈴音(スズリン/岡本夏美)らとハギャレン復興のために活動しています。
そんな理沙を演じるのは、今回で朝ドラ出演2作目となる田村芽実さん。撮影中ずっと一緒に過ごしてきたハギャレンメンバーへの思いや、ギャルマインドの魅力について聞きました。
パラパラの練習は部活の筋トレみたいでした
――糸島フェスティバルで、観客と一体になってパラパラを踊るシーンはとても感動的でした!
ドラマの撮影に入る前から、ハギャレンの4人でパラパラの練習をしていたんですけど、筋トレみたいですごく大変で難しくて。もう手がとれるんじゃないかっていうくらい踊って(笑)、本当に部活動みたいな感じだったんです。
だから、このシーンを撮っている時は、練習してきた日々を思い出してグッときちゃって、涙をこらえながら踊っていました。大人になると仕事とか家族とかのために動くことが多くなるから、自分たちで何かを作り上げて達成感を得ることって、リサポンたちの世代にしかできないことだと思うんですよね。あそこまで自分たちのために一生懸命になれることはなかなかないので、そういうところもグッときたのかなって思ったりしました。
――ルーリー役のみりちゃむさんは現役のギャルですが、残りのハギャレンメンバーは実際にはギャルではないですよね。ギャルとして撮影中にテンションを高くキープするのは大変ではなかったですか?
現場に入るまでは、ギャルのテンションって、どうやったらいいんだろう?ってすごく悩んでいました。きっと、みりちゃむ以外のメンバーも同じように悩んでいたと思います。
でも現場ではみりちゃむが引っ張ってくれて、私たちも本物のギャルになったような気持ちになって、自然とテンションが上がるんです。ギャルを演じる部分はみりちゃむが頼りになるし、別の部分では違う人が引っ張ってくれるし、みんなで支え合って高め合って、撮影を楽しむことができました。
――ハギャレンのメンバーは本当に仲よしなんですね。
今日ちょうど、ハギャレンのみんなはもう“いとこ”みたいな存在だねって話していて。撮影していた場所がのどかなところが多かったせいなのか、みんなといると親戚の家に集まったような感じがするんです。それぞれ個性があって、タイプも全然違うのに、すごく仲がよいので、友達っていうより、もともと一緒に育ったいとこみたいな関係性に近い感じ。取り繕わなくていい関係というか。
――糸島フェスティバルのほかにも、ハギャレンのメンバーとの撮影で印象に残っているシーンはありますか?
「箸が転んでもおかしい年頃」とかってよく言いますが、本当に何がおもしろいのかわからないけど、ずっと4人で笑ってるみたいなシーンがたくさんあって(笑)。私は実年齢が26歳なのですが、そういう時間って26歳になるとあんまりなくて、リサポンたちの世代、高校生とか青春時代だけの特権みたいな時間なんですよね。
それをギャルたちは精一杯楽しんでいる。「ギャルのキャラクターのままで話し続けてください」みたいなアドリブのシーンも結構あったんですが、その時に心から楽しんでいたり、笑ったりしている私たちを皆さんに見てもらえたら、きっと一緒に楽しい気持ちになってもらえるんじゃないかなと思います。
絶対にオーディションに受かりたくて髪を金髪にして挑んだ
――「らんまん」の大畑佳代役に続いて、今作が2度目の朝ドラ出演となりました。理沙役に決まった時はどんなお気持ちでしたか?
今まで受けてきた中でも、意気込みが違ったオーディションでした。もちろん、いつも受かりたいと思ってオーディションを受けているんですけど、今回に関しては、本気で受かりたいんだという意志をしっかりと見せなくちゃいけないと思って。そのために外側から変えようと、生まれて初めてブリーチして、金髪でオーディションに挑んだんです。だから、受かった時にはただただうれしかったですね。
――実際に金髪にするほど、この作品に出たいと思った理由はなんだったんですか?
もともと朝ドラは好きだったのですが、ミュージカル女優として活動してきたので、映像の世界は自分とは無縁だと思っていたんです。そんな時に、「らんまん」に出演する機会をいただいて。「らんまん」の現場はお芝居のことだけに集中できて、とても楽しかったんですよね。だから、どうしてもまた朝ドラの現場に入りたいって思いました。
――オーディションを経て勝ち取った理沙役ですが、理沙はどんな女の子だと思って演じていますか?
「おむすび」の登場人物って、それぞれが自分の信じることに一生懸命だなって思うんですけど、その中でもリサポンはとにかく一生懸命。ギャルが大好きで、ギャルのためなら何でもするじゃないですけど、まわりが見えなくなっちゃうくらい真っすぐな子なんです。でも、その真っすぐさをまわりの人たちが愛せるような愛嬌もあって。
――ご自身と重なる部分はありますか?
リサポンは“隠れギャル”っていう立ち位置で、ギャルになりきれていないというか、どちらかというと“ギャルオタク”なんです。私もちょっとオタク気質なので、そこは似てるかなと思います。リサポンのキャラクターについては、私なりに作り込める余白があって、監督さんからも「やりすぎなくらいやっていい」って言ってもらったので、はっちゃけて演じています。
実は、リサポンのマインドはギャルとはちょっと違うところにある
――理沙はギャルの歴史を本にするという夢がありますが、ギャルのどんなところに魅力を感じているのでしょうか。
例えば、私自身は山口百恵さんが好きなんですけど、リサポンのギャル好きはアイドルグループに憧れる感覚に近いのかなって思います。たぶん、もともとはギャルの外見、ファッションやメイクに惹かれていたんだけど、ギャルマインドを知るようになって、内面的にも好きになったんだと思うんです。
実は、リサポンのマインドはギャルとはちょっと違うところにあるんだけど、大好きなギャルと一緒にいたいから、頑張って目指すギャルを演じているって感じなのかなって思っています。
――なるほど。歴史を本にするって、確かにちょっとギャルのことを俯瞰で見ている感じがありますよね。
高校生になってようやくハギャレンに入って、自分が憧れのアイドルグループに入ったみたいな気持ちなんです。だけど、アイドルになったばかりで、どうしたらいいのかわからなくて空回りしちゃうっていう(笑)。
今を楽しむために、ギャルっていう朝ドラには異色の要素を入れ込んだのかな
――撮影が始まる前に、ギャルについて研究されたりしましたか?
すごい研究しました! ギャルの雰囲気をつかむために、みりちゃむがモデルをしていたギャル雑誌のYouTubeを見たり、平成ギャルの映像や雑誌とかをたくさん見たりして。あとは、浜崎あゆみさんの楽曲をたくさん聴き込みました!
――研究してみて、平成のギャルの魅力を感じられましたか?
未来への不安があると、将来のために逆算して今を生きなきゃいけない部分もあるじゃないですか。でも、ギャルたちは「今は今しかないから楽しもう」と思っていて。確かに、ちゃんと今を楽しむことってすごく大切だから、それを伝えるために、ギャルっていう、朝ドラには異色の要素を入れ込んだのかな。今を精一杯楽しむってことは、私もリサポンを通じて伝えていきたいです。
――ギャルのメークやファッションに挑戦してみた感想は?
正直に言うと、最初はそういうメークやファッションにあんまり魅力を感じなかったんです。でも、毎日メークをしたり、長いつけ爪をつけたり、ギャルファッションを着ていくうちに、どんどんそっちの自分の方がしっくりくるようになってしまって(笑)。自分の感覚が変わってきて、客観視せずに、自分の主観だけで好きを突き詰められるのって、すごくポジティブなことなんだと思うようになりました。
――田村さんもギャルマインドに変化したんですね。
ギャルって歴史はまだ短いですけど、とっても奥深くて、これから日本の文化になっていくんじゃないかなって強く思いました。リサポンはギャルの歴史を本にしたいって言ってますけど、いつかギャルの歴史が教科書とかに載るような日が来るかもしれないなって、私も本気で思っています(笑)。
たむら・めいみ
1998年10月30日生まれ。群馬県出身。アイドルグループ「アンジュルム」の元メンバー。2016年にグループを卒業後、舞台作品を中心に活躍。主な出演作に、舞台『ウエスト・サイド・ストーリー Season2』『ヘアスプレー』『MEAN GIRLS』など。NHKでは、連続テレビ小説「らんまん」、「アイドル」などに出演。