新・介護百人一首

新聞紙
ひろ真中まんなか
穴をあけ
介護床屋の
さあ開店だ

埼玉県千木良雅一 80歳)

大分県 吉﨑ゆみ
宮城県 ペンネーム Luck

詞書

介護の中でも床屋はやっかいなもの。妻が新聞紙の真中に穴をあけて私がてるてる坊主の様に頭を出す。それで介護床屋完成。

感想コメントをいただきました

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)

介護の中でも床屋はやっかいと言いつつ、それをユーモラスに心の余裕をもって楽しんでいるその姿勢が素敵です。「新聞紙拡げ真中穴をあけ」という出だしから、生命のリズムが伝わってきます。「介護床屋」という言葉の選択も的確です。そして、「さあ開店だ」という最後の言葉に勢いがあり、時間の流れが目に見えるようです。介護もまた、大切な命の営み。そのような生命哲学のようなものが結晶した作品です。

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。